「東ティモール通信 No.43」

日本の皆様、こんにちは! ロスパロスは寒い毎日が続いています。

先日28歳の誕生日(ティモールに来て5回目の誕生日)を迎えました。お祝いのメッセージを下さった皆様、本当にありがとうございました。 ティモールでもたくさんの方々が祝福してくれ、嬉しい一日となりました。相変わらず迷い、戸惑いつつですが、後悔しない人生にするために、今できること、 やりたいことを考え、行動したいな、と思っています。そろそろ将来についても考え出さなくてはいけないなとも思っています。。

今月は、現在実施しているプログラムの支援先である味の素CSR部の方々が視察にいらしたお話しを分かち合わせて頂きます。

プログラムの視察

今年4月から実施している栄養不足改善プログラム。7月12~16日にかけて、支援先である味の素株式会社CSR(Corporate Social Responsibility)部の方々が視察にいらして下さいました。CSRとは、“企業が利益を追求するだけでなく、社会へ与える影響に責任を持ち、 あらゆる利害関係者からの要求に対して適切な意思決定をすること”を指します。味の素だけではなく、王子ネピアやRUSH、いろいろな企業がCSRを実施 しています。味の素は、CSRとして「食と健康」国際協力ネットワークプログラムを実施しており、NGOやNPOの現地活動支援、人材育成の支援、人・情 報ネットワークづくりの支援をおこなっていらっしゃいます。今年度、私たちAFMETは、「栄養失調児の削減を目的とした母親対象の栄養と食に関する知識 向上プログラムとその実践」を行うために味の素へ申請をし、支援事業のひとつとして選考して頂くことが出来たのです。

私たちが実施しているプログラム、ちょっと長いタイトルなのですが…
①5歳以下の子どもの身体測定、
②栄養失調児を持つ母親への個別相談、
③栄養・調理・家庭菜園に関するセミナーの実施、
④隣村の母親が交流し、モチベーションを高めるための母親大会の開催を行う予定でいます。味の素の視察では、SISCa(母子健康診療サービス)の現状と身体測定の現場を見て頂く事になりました。

私たちが訪れたアイレベレ集落のSISCa。SISCaの日となると、大勢の人が集まり、わいわいがやがやしているのが常なのですが、ものすごく静か…。まさか…と思い、ポストSISCaの中を覗いて見ると…。

保健ボランティアさん(SISCaでは、参加者名簿に母親と子どもの名前を記入、身体測定を行う、医師から受け取った薬を患者さんに渡す等の役 目)4名が椅子に座っているのみで、子どもを連れたお母さんは誰もいません!保健ボランティアさんに理由を聞いてみると、「アイレベレ集落はコミュニティ ヘルスセンターに近く、皆がそちらを利用しているから、SISCaはもう使われていない」との事。名簿を見せてもらうと、SISCaが始まった当初は 300名もの母親が参加していたのに、現在は30名の母親が子どもの身体測定に来ているだけでした。ボランティアさんだけではなく、お医者さんたちも通常 は一緒にSISCaに来て妊婦さんや患者さんの診察を行うはずなのですが、誰も来ていませんでした。「300名は来なくても、来てくれるお母さんや子ども たちがいるから毎月こうしてSISCaをやっている」とボランティアさんたちは言っていました。昔はコミュニティヘルスセンターに行っても医師がいなかっ たのですが、行政の制度が変わり、現在では24時間医師からの診察が受けられ、救急システムもあります。SISCaが重視されない時代になって来たのかと 思うと嬉しいような、悲しいような…。行政にアイレベレ集落のSISCa現状を伝える事を約束してその場を後にしました。

love-36a

↑4時間かけて歩いてきた親子。PSFが体重測定を行う。

love-36b

↑お母さんたちにインタビュー中。

東ティモールではこれまで、子どもたちの身長を測定する事はなく、体重と二の腕のみの測定を行ってきました。平らな場所が無く、測定器が壊れやすいという 理由から身長は測らなくなったそうです。2歳以下の子どもは寝かせて身長測定を行いますが、その測定器も見つける事が出来ませんでした。また、東ティモー ルの母子手帳には体重の乳幼児曲線は記載されていますが、身長についての記載は一切ありません。この現状を踏まえ、私たちのプログラムの中でも、栄養不足 である子(低体重の子)に重点を置いてプログラムを実施する予定でした。2013年にインドネシアの大学かなにかが実施した調査では東ティモールの5歳以 下の子ども、実に84%が低体重児であるという結果も出ています(ちなみに低身長の子どもは50%)。

love-36c

↑2012年のSISCa。たくさんの人が訪れていた。

love-36d

↑東ティモール母子手帳、体重の発育曲線

ですが、現在WHOが重視しているのは“低身長”の子どもたちです。年齢の身長基準を満たしていない子どもたちは低身長、つまり栄養不足となりま す。WHOの世界目標2025では、5歳未満児の低身長を40%減らすことが最重要目標となっており、また、2030年までの世界共通目標であるSDGs にもこれが取り入れられる予定です(9月に国連総会で決定予定)。

栄養改善の指標として世界が低体重ではなく低身長に注目していること、東ティモール保健省もその方向へ移行しつつあるという状況を踏まえ、味の 素CSR部の方々と話し合った結果、AFMETも“低身長児の子どもの割合を減らすこと”を目標とすることにしました。正直に言うと、7月に入ってのいき なりの方向転換なので、急に目標を変えることに対して抵抗を感じていました。これまで測定してきた子どもたちのデータもすべてやり直し。身長測定器もなん とかして探しださねばなりません…。保健省やUnicefに問い合わせをしてみたのですが、とうとう、身長測定器のサンプルさえも見つけ出すことは出来ま せんでした。。

無い場合はどうするか…?あぁもう…面倒くさい!!!考えたくない!!!でも、どうしよう…と悩むこと数日。。ええぃ!もう作ってしま えっ!!!と、ロスパロスで大工さんを探しだし、作ってもらうことにしました。私もだんだんと脳がティモール人化しているのでしょうか…?(笑)。 日本 には、無いものが無いので、これまで自分でものを創造することってなかったように思います。ティモールにいると、無いものは無いんだ!とあきらめること も、無いときは作ってみればいいんじゃないか?と考え、悩むことが多々あります。やっぱり自分って、ここにいて変えられているんだなぁとしみじみ感じまし た。

love-36e

↑完成した測定器(2歳以下の子ども用)。寝かせて測る。

love-36f

↑立って測るための身長測定器

出来上がった測定器にメジャーを張り付けていないので、まだ完成とは言えないのですが、今後はこの二つの測定器をもって身長測定を行い、いろいろな 活動を実施していこうと思っています。新しいことに挑戦しなければいけないというプレッシャーで重かった腰もようやく上がり、私もこれからは立ち上がって 前進していけそうです!頑張ります。

2015年8月26日 深堀夢衣

【 筆者紹介 : 深堀夢衣さん 】
深堀さんは、AFMETの現地事務所代表。
愛くるしく逞しく、どこまでも人々に優しい女性。
AMR(アマゾネスめひリアリダデ)は、そんな深堀さんの愛称!
みんなの夢を実現するため明るく力いつぱい頑張っています。