市民の足、ミクロレット

ミクロレット

町を行きかう車を見ていると、たくさんの小さなワゴン車を目にします。このワゴン車は「ミクロレット」と呼ばれる公共の乗り物。ディリ市内 を巡回するものと、地方へ行くものとがあります。バイクや自家用車に乗る人が増えたとはいえ、ミクロレットはまだまだたくさんの市民に利用されています。

乗れるだけ、走れるだけ

このミクロレット、最高速度:走れるだけ! 車検に出したらぜったい通らないほどに、つるつるにすり減ったタイヤで、走る、走る。

最大積載量:乗れるだけ!女性専用車両なんて夢のまた夢、老若男女押し合いへし合い、乗れるだけ乗る。一人乗りの助手席に二人乗るのは当た り前の話で、中がいっぱいになると、出入り口に立ち乗りする男性陣。空席はあるかなーと中をのぞいてみると、すでにいっぱい、あきらめるか・・・と立ち去 ろうとしたところ、「空いているからお乗りなさいよ」、手をこまねくその先は、おばちゃんのひざの上だった!!

禁煙席がない

禁煙席なんてもってのほか、音楽は低音が腰にひびくほどにドンドン、高音が耳をつんざくほどにガンガン、これでもかというほどに鳴り響く。若者たちには、音楽のない静かなミクロレットより、このうるさい方が人気で、流行の音楽をいち早くキャッチ。

おつりもない!

料金はディリ市内で10~25セントですが、10セント出すと20セントくれと言われ、25セント硬貨を出すと5セントのおつりはない!と返される理不尽さ。

メッセージ

車体のデコレーションも思いおもいのもので、フロントガラスにはミクロレットの名前なのか、皆へのメッセージなのか、だいたい一言刻まれて います。「Forever(永遠)」とか、「La kole/ラコレ(疲れないぜ)」といった粋なものや、愛娘の名前を記した「Jonatan」など、見ているだけで面白く、「今日はノスタルジア号に乗っ て来たのよ」なんて言うと、何か素敵な乗り物でやってきたような気持ちになれます。

ステキな乗客達

こんな無法地帯ミクロレットでも、女性や老人には必ず席を譲ってくれる男意気や、たまにおばちゃんのひざのぬくもりも感じられる、心温まる 出来事も起こります。一緒に乗ったからにはもうみんな知り合い、「あんたもうちょっと寄りなさいよ!」とか、「お菓子をどうぞ」とか、「最近は・・・」と 会話が始まる車内。先日も、娘を抱えて乗った車内で、「荷物を持っていてあげるよ」と、すてきな男性に出会いました。こんな思いやりが、ごく自然にできる 東ティモールの人たち、私もこんな風に自然に人を思いやれたらなぁ。

人もにわとりも荷物も、一緒になって今日も行く行くミクロレット。みなさんも、東ティモールに来られることがあったら、ぜひ一度乗ってみてください!

2012年3月8日