女子中学3年生の二人が見た東ティモール

【 筆者紹介 : 土井あさひさん・林 侑果さん 】
上智福岡中学高等学校の中学3年生のお二人、土井あさひさんと林 侑果さんは、全国から選ばれた中学生・高校生8名と一緒に、8月の夏休みを利用して東ティモールを訪問しました。東ティモール政府が初めて日本の生徒の皆さんを招待したものです。
お二人は、帰国後全校集会で研修報告をされました。同校の船橋 巌先生は、お二人の報告を通じて「東ティモールが、大変近しい国となりました」と語ってくださいました。
とても嬉しいことですね。 そんなお二人のレポートが届きました。皆さんも、是非ご覧ください!

なお、文中にて紹介されていますシスターモニカは、2006年の騒擾事件の際、在留邦人・日本大使館員の皆さんが国外退去されたときも、東ティモールの皆さんと共に残られた方で、現地の皆さんから大変敬愛されておられる方です。


私たちは 8 月 19 日から 27 日まで東ティモールの政府に招待され、訪問しました。東ティモールはアジアで一番新しい 国で2002年に独立し、それまではポルトガルの植民地でインドネシアの支配が最近までありました。平均年齢は十八歳 で、本当に街を歩いていると子どもたちがたくさんいました。

これから東ティモールでの活動を紹介します。 一日目、東ティモールについてすぐホテルに行くと、私たちは早速移動を 始めました。最初に訪れた場所はヨハネパウロ 2 世でした。写真でもわかるとおり、とても大きな像でした。この像が作られ た理由とは、ヨハネパウロが東ティモールを励ましに来たから、ということでした。ここでは、キリスト教がとても大切にされてい るということを知りました。love-28a

その夜は外務省局長主催のウェルカムパーティーがありました。私たちはここで東ティモールの歴史について、外務省局長の実際体験したことを聞き、さ らに詳しくイメージすることができました。彼は東ティモールの今後のことも話して下さりました。彼は政府同士のつながりよりも人と人の関係が重要だとおっ しゃっており、今回参加したスタディーツアーが東ティモールの未来のためになることを実感しました。この話を聞き、世界中の人と人とのつながりがいかに大 切なものであるかがわかりました。

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二日目、私たちは朝から日本大使館を訪れ、在ティモール日本大使に話を伺いました。その方は東ティモールをどう見て欲しいか、ということを話し て下さり、この国のことを理解するのに必要なことを学びました。その後、東ティモール唯一の博物館に行きました。そこでは東ティモールが独立を勝ち取るま での歴史を学びました。残念ながら案内してくださった方の訛りが強く、自分の英語力ではすべてを完璧に理解することはできませんでした。しかしその中で最 も興味を持ったのは、ティモール人が戦争の間使っていた隠れ部屋でした。その部屋は家の地下に作られており、見つかりにくかったということを教えてくれま した。東ティモールのおおまかな戦争の流れは知っていたものの、一般人が実際どのような生活をしていたのかを知らなかったので、隠れ部屋のお話は興味深い ものでした。

博物館に行った後、私たちは現地のJICAの事務所を訪れました。そこでは義肢装具士として働いてらっしゃる松野由恵さんがお話をしてください ました。松野さんは活動を通して、ティモール人は笑顔が絶えないということがわかったとおっしゃっていました。歌を歌いながら、冗談を言いながら仕事をす る姿はけじめがついていないようにも思えますが、私には仕事を本当に楽しんでやっているのだというイメージが伝わりました。仕事はティモール人のように楽 しみながら笑顔でやるものなのか、日本人のように真面目にこなしていくものなのか、考えさせられました。

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三日目、私たちは外務協力省を訪れました。そこで政府の方のお話を伺いました。その方は東ティモールの発展についてお話をしてくださいました。 先進国というと、ビルがたくさん建っていたり、道路が整備されていたり、というイメージが一般的だと思いますが、お話をしてくださった方は、東ティモール に、そのようなことにおいて発達して欲しくないとおっしゃっていました。彼は東ティモールの人々に、豊かな教養を身につけ、さらに発展させていきたいと考 えていました。そのため、東ティモールの発展のために何が必要だと思うのかを聞くと、生徒同士の交流だ、と答えてくれました。私たちが東ティモールに行っ たのは自分たちの経験のためだと思っていましたが、現地の人のためにもなっていると思うとこれからの日々を大切にしようという気分になりました。その後、 外務省を訪れ、外務大臣にお会いしました。外務大臣のお話をお聞きすることはできなかったのですが、東ティモールの滞在を楽しんでいるということを伝える ことができました。

 

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次の日の四日目、私たちは東ティモールのシンボルの一つである「クリストレイ」に行きました。クリストレイとは山の上に立つ、とても大きなキリ ストの像です。東ティモールの国民の99%がキリスト教で、キリスト教は国民にとってとても大切なものであり続けています。クリストレイではたくさんの人 が話したりジョギングをしたりしていて、クリストレイでの雰囲気はとても穏やかでした。この、時間がとってもゆっくり流れる東ティモールの雰囲気は、キリ スト教の信仰からきたのかもしれない、と私は思いました。

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5日目、6日目は2日間のホームステイをしました。これが私たちの部屋です。ホームステイ1日目はホストファミリーに山に連れて行ってもらい、 一日中そこで過ごしました。東ティモールの山はこんな感じで、ちなみにこれはパイナップルです。日本とは違った種類の豊かな自然を満喫することができまし た。山の道路はまだ舗装されておらず、後部座席にシートベルトなしで4人座った状態で、時々宙に浮くぐらい、私たちの体験したことがないほど揺れました が、それも楽しい思い出となりました。山の教会にも連れて行ってもらい、そこでポルトガル語の聖歌を、発音を教えてもらいながら歌いました。山の家の前に は東ティモールの名産品、コーヒー豆が干されていました。

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ホームステイ2日目では、市場やショッピングモールに連れて行ってもらい、その後、海に行きました。海の水は透き通っていて、色がとても綺麗で した。ちなみに、東ティモールでは毎日美しい朝日と夕日を見ることができます。これが夕日の写真です。日本ではなかなか見ることができないような美しい夕 日を見て、とても感動しました。海に行ったあとはホストファミリーがシスターモニカに会わせてくださいました。シスターモニカは東ティモールで紛争がある 頃からそこにいらっしゃる日本人のシスターです。東ティモールの公用語はテトゥン語とポルトガル語で、彼女はポルトガル語がとてもお上手だったので、「ホ ストファザーに英語で聞きづらい質問があったらポルトガル語に訳して聞いてあげるよ」と言って下さり、私たちは様々な質問をしました。ホストファザーも政 府関係者だったので、「国の発展のために、例えば便利な物など、欲しいものはありますか?」と聞くと、「私は便利な機械など、そういう物よりも、有能な人 財が欲しい」とおっしゃいました。そして、「東ティモールでは時間の流れがゆっくりしていて、笑顔が溢れている国で、国の発展によってこれらのものを失っ て欲しくない」ということを伝えました。シスターモニカのおかげで、ホストファミリーと国の未来について話し合うことができ、貴重な経験となりました。

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さて、ホームステイではホストファミリーに浴衣を着せることもしました。浴衣は気に入ってもらえたみたいで、色々なポージングをして喜んでいました。そうめんも作りましたが、熱帯地域の東ティモールの人には淡白な味はあまりお口に合わなかったみたいです。

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ホームステイが終わると、2校学校交流をしました。最初に私たちの姉妹校、聖イグナチオ学院に行きました。聖イグナチオ学院は2013年に開校 し、現在は中1と中2の約180人がいます。そこで記念植樹、親善スポーツ、お互いの学校と文化の紹介、そしてダンスや歌などの出し物をしました。日本の 文化の紹介では浴衣を着て紹介をしました。学校紹介で上智の演舞のビデオを見せたところ、とても好評でみんな拍手をしていました。本物の演舞を見せたい な、と思いました。聖イグナチオ学院の生徒はとても礼儀正しく、「シスター!シスター!」と言って慕ってくれました。次にカノッサ高校に行き、そこでお互 いの学校について、質問や説明をしあいました。

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首に掛けている布はタイスという東ティモールの伝統的な織物で、冠婚葬祭の時や歓迎された時に首にかけてもらえます。聖イグナチオ学院でも、カノッサ高校でもタイスをいただきました。

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最終日の夜にはホストファミリーが集まり、farewell party をしました。そこでは東ティモールの伝統的なダンスを見せてもらったり、私たちからはこの活動についての感想や、歌やダンスなどの出し物をしました。

東ティモールの政府関係者の方々にお話を伺って、私は国の発展に一番大切なのはインフラ整備ではなく、教育だと思いました。国のレベルはどれだ けインフラ整備が進んでいるのか、ではなく、国民の教養によって決まると思います。先ほども紹介したように、東ティモールには美しい自然がたくさんあり、 人々はみんな明るく、優しくて、普通に歩いている時に話しかけてくれたりして、とてもフレンドリーです。この国はこれからも発展していくと思いますが、国 の発展によってこれらのことを失って欲しくないと強く思っています。アジアで一番若い国なので、政府関係者の方々にお話を伺った時も、未来への希望を感じ ました。この国の未来がとても楽しみで、これからも何らかの形で関わっていきたいなと思いました。

このようなすばらしい経験を下さった東ティモール政府、お世話下さった皆様に心から感謝します。

10/Oct./2014