東ティモール通信 48

日本の皆様、こんにちは!相変わらずロスパロスは寒いです(*_*;

先日29歳の誕生日をロスパロスで迎えました。ティモールに来て6回目の誕生日。6回目?!と自分でもビックリしてしまいます。「もうおばさんだねぇ~」と言いつつ、今年も祝ってくれるスタッフたちに感謝です。

さて、今日もガタガタ道を通ってイリオマールまでやってきました。イリオマールまでは約3時間、ガタガタ道が続きます。あぁいつになったら座ったままの姿勢でイリオマールまで着けるのだろう、、と夢を見ずにはいられない程です。最近考案したのが、ガタガタしながら鳥を探す!というもの。木の中にいる鳥って意外と見つけるのが困難です。私は探せないので、空を飛んでいる鳥や道路の上を歩いている鳥を必死に探して数を稼いでいます。電線にとまっている!と思ったらなんでもないただの金具だったりもしてなかなか面白いです。遠くにいる牛を見つけたら10ポイントが加算されます。なんじゃそりゃ!?なゲームですが、スタッフたちも真剣になって探してくれています。

今回は味の素の活動と、先日あったスタッフたちとの小話を書いたレポートです!

*イリオマールでの出会い①*

先日、毎月実施している身体測定であるお母さんと栄養失調の子どもに出会いました。お母さんの名前はエスペランサ・ダ・コスタさん。赤ちゃんの名前はフィデリア・セプティアナ・マデイラちゃん(女の子、生後9ヶ月)。フィデリアちゃんは生後9ヶ月ですが、体重が5キロしかないことが判明しました(WHOデータによると、生後9ヶ月の女の子は8.2キロが標準体重)。AFMETでは栄養失調の子どもを発見した際、家庭訪問を行うことにしています。子どもがどのような家庭環境で育っているかがわかりますし、お母さんに個別に指導することが可能だからです。

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↑医師と助産師を連れての家庭訪問。エスペランサさんとフィデリアちゃん(生後9カ月)。

お医者さんを連れて家庭訪問に行き、子どもの体重と上腕を測定し、お母さんへのインタビューも行いました。エスペランサさんは、以前タイス(東ティモールの伝統織物)を織っている際に火災に遭い、ひどいやけどを負いました。これまで13人の子どもを産んでおり、フィデリアちゃんは13番目の子どもです(うち3人は既に亡くなっている)。42歳で妊娠。フィデリアちゃんは早産で生まれてきていました(8カ月で出産)。乳歯も生えてきておらず、一人で座ることもまだできません。幸いなことに他の病気(発熱、下痢なし)を患っておらず、食欲もあります。そのため、この日はプランピーナッツ(ピーナッツを主原料とした栄養治療食。ピーナッツバターのような味。一袋で500キロカロリーものエネルギーを得ることができる)の配布のみを行い、翌週訪問した際も体重に変化がない場合は、ロスパロス(ラウテン県の中心)の病院へ搬送することにしました。
少し残念だったのは、家庭訪問を実施したこの日、フィデリアちゃんのお父さんに会えなかったことです。エスペランサさんに尋ねたところ、旦那さんは週のほとんどを畑で過ごしているのだそうです。東ティモールではこんな家庭が少なくありません。家と畑は遠く離れていることが多く、力仕事である畑は男性の仕事なのです。畑の近くに小さな小屋を建て、そこで生活する男性は多いです。本当は、母親だけではなく父親にも、自分の子どもの健康状態をわかって欲しかったのですが…。ロスパロスへ搬送することになった場合、父親は家庭に戻って他の9人の子どもの面倒を見てくれるのか、母親とフィデリアちゃんがロスパロスに行くことを許さないと言い出さないか、、心配に思いつつ、この日は帰路につきました。
約束の翌週、私は別の仕事で行くことができず、スタッフだけがフィデリアちゃん宅へ行ってくれました。体重に変化がなかったため、ロスパロスへ搬送することを決めました。この日はお父さんも一緒におり、心配そうな顔をしながらフィデリアちゃんのことを見つめていたそうです。よろしくお願いしますと何度も握手されたスタッフ。その父親の瞳には涙が浮かんでいたそうです。この話をスタッフから聞いたとき、フィデリアちゃんのお父さんのことが少しわかった気がしました。10人もの子どもを育てるために、週のほとんどを何もない(電気、ガス、トイレなど)畑で過ごし、とれた穀物や野菜があれば、ニコニコしながら担いで家庭に持って帰ってくる。そんなお父さんなんだろうな、と思いました。どの家庭も、どんな家庭でも、子どもの心配をしない親はいないですよね。。
ロスパロスへ移動してきたフィデリアちゃん。毎週一緒にラウテン県中心地にある病院に行き、お母さんは、担当の栄養士から「魚もしくは卵と野菜の入ったおかゆを食べさせること」、「プランピーナッツも1日1+1/2個を食べさせること」と、指導を受けました。しかし、病院でも問題が一つ。それは言葉の壁です。イリオマールの人々はマカレロ語を話します。ロスパロスではファタルク語。同じ県内でも住んでいる地域によって話す言葉が違うのです。なので、共通語であるテトゥン語での指導になるのですが、病院で働いている人たちは、なぜか上から目線…。日本のように、患者さん側に寄り添って話してくれるなんてことはありません。まさにバレーボールのアタックのように、上からバシッとビシッとあびせられる(ように私からは見える)言葉たち…。フィデリアちゃんのお母さんは、いつの間にか無口になってしまっていました。。指導が終わって外に出た後、一番上の息子さん(テトゥン語が理解できる)がついて来ていたので、彼にもう一度説明し、彼からマカレロ語で母親に通訳してもらいました。お母さんも、今度は理解してくれた様子でした。

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↑病院で順番を待つお母さんとフィデリアちゃん。
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↑栄養士から指導を受けるお母さん。ちょっと心配そう…。

外国人だからと自分からティモール人に距離をおくのではなく、どんどん近づいていくこと。これはなかなか勇気がいるけれど、忘れてはいけないことだと思います。どうせティモール人だしぃ~、、ではなく、どうせ私は外国人だけどティモール人に寄り添いたい!という気持ち。忘れずにいたいです。フィデリアちゃんの体重は増加したのかどうか、また報告したいと思います。

*ちからを抜くちから*

ティモール人のスタッフと仕事をしていると、ガックリ肩を落とさせられる、力を抜かされることが多いです。先日も私が真剣にスタッフ3名と共にミーティングをしていたときのこと。大きな音を立てる虫が事務所に1匹入って来ました。虫の名前はファタルク語で「プププーPupupu」。日本語だと何という虫なんでしょう?3センチくらいの大きさの黒い虫です。蜂と同じような音を立てます。会議は一時中断。再開しようとしたら、1人のスタッフは上の空で虫をじーーーっと見つめています。もぉ話ちゃんと聞けー!と思ったのですが、突然彼はこう話出したのです。
「そういえばプププって、地震と関係あるよね~」うわっ…何その話、超気になる…!!!
「あのプププが散発後の髪の毛を地球の外にいる神様に持って行くから地震が起こるんだよね」
えぇー!何それ…それでそれで?!
「プププは神様に対して髪の毛を見せながら“あなたの孫たち(地球で生きている私たちのこと)は既に死んだ”って言うから、私たちが生きてるか確かめたくて地球を揺らして確認するんだよ!つまり、これが地震」
ま、、、マジか!!?
「だから地震が起きたときはティモール人は叫ぶんだよね、地球の外にいる神様に。生きてるよ―――ってさ!まったくプププはさぁ~…」
スタッフがしてくれた話にも驚きですが、プププって。虫のネーミングセンス!!皆が一斉にプププについて話し出すので事務所はプププがたくさん。あぁ、力が抜ける。。
私が笑いだすとスタッフたちもなぜだか笑いだす始末。
この人たちって本当にもーー!!
彼らは力を抜かせるプロです。ときにはこんな、どうでもいい事をゲラゲラ笑いながら話す時間があるのもいいのかも。
ちからを抜くちから。大事です。これだからティモール人は憎めません。。

2016年8月22日 深堀夢衣