東ティモール通信 No.38

日本の皆様、明けましておめでとうございます!だいぶ遅い年始の挨拶になってしまい、申し訳ありません。

今年、ティモールに来て5回目となる新年を、ロスパロスで迎えました。気づいたらもう5回目!…この地で今年も新年を迎える事ができ、日本で応援してくれている家族、皆様、ロスパロスで受け入れてくれているティモールの皆に感謝です。先月から新しい仕事も始まり、バタバタと忙しい毎日を過ごしています。

2015年も皆様にとって素晴らしい1年となりますよう、祈っています。

*新しい年を迎えて*

新年は、毎年行っているコム村で迎えました。4日間をコム村で過ごしたのですが、毎日大雨のため、予定していたバーベキューは出来ず…。
でも、久し振りに会う友達の顔に、自然と笑顔がこぼれました。
いつもお世話になっているお父さんとお母さんも、元気な様子で一安心。

去年のクリスマスは風邪を引いてしまい、寝込んでいた私。心配して電話をくれたおばちゃんから、私が病気だったと伝わったようで、
「なんで電話しないの!?」とお母さんには怒られてしまいました。
お父さんは、「パヤが病気とわかってから、お母さんはずーっと家の中を行ったり来たりしていたんだよ」と、教えてくれました。お母さんは心配事があると、家の中を行ったり来たりするのが癖なんだそうです。

このお宅のお父さんとお母さんは、私がいる事を、当たり前の事のように接してくれます。飾るのでもなく、臆するのでもない。皆が自分を解放してくれている感じが、私にはとても心地良いのです。彼らの前では、私も自分の家にいるようにリラックスする事が出来ます。
ちなみに、お母さんとはロスパロスの言葉、ファタルク語で会話します。ファタルク語は、テトゥン語とは違い、文法は日本語と似ています。まだまだ覚えはじめのため、ジェスチャーが多いのですが…。お母さんと私の会話がかみ合っていないのが、お父さんにとってはとても面白いようで、いつも笑いながら訂正をしてくれます。宿泊していた4日間、お母さんは毎日私のために水浴びのためのお湯を沸かしてくれました。
「(水浴びは)慣れているから大丈夫だよ」と言うのですが、
「何言ってるの!また風邪引いたらどうするの?!」とすごい剣幕です。
「怒っているの??」と私が聞くと、お母さんも、お父さんも大爆笑。それは、「怒ってないよ」のしるし。言葉は片言でも、一緒に笑顔になれる、また、自分の身体を気遣ってくれる、家族のようなティモール人達に、心から感謝です。

新しい年を迎えて思った事は、今年はティモール人と一緒に何をしよう?という事でした。新しい事業の実施に向けて、ひたむきに頑張ってくれたスタッフたち。去年は自分の能力の無さが見えた1年間でした。今年はいろんな事にチャレンジして、自分の経験値をもっともっと上げたいと思っています。

年明けの7日、JICAでプロジェクト・マネージャーの面談がありました。提案した事業概要の説明、どのように事業を実施していくかを発表しました。結果は、残念ながら落選でした。来月にはバウカウ県を再度訪問して、村長さんたちに落選の報告をしなければなりません。これからどう動くか?このままにするか?ティモールにいる間に知る事の出来た人々の生活の現状を、どうすれば改善できるのか?人々が必要としている事に、どうすればこたえる事ができるのか?模索する日々が続いています。

*魚釣りへ!*

先日、ティモールのお友達家族と一緒に魚釣りに行って来ました。ロスパロスには大きな湖があります。湖の名前はイラララル Ira-lalaru-。この湖の近く、マラハラという所です。
イラはファタルク語で水、ララルは流れが静かという意味です。この湖は、雨期になると水嵩が増し、道路が通れなくなる事もしばしばです。
また、ワニがたくさんいる事でも有名です。毎年何人かはワニに食べられる、もしくは噛まれています。ティモールでは、ワニは先祖ですので、殺す事は決して出来ません。
人が行方不明になってしまった際は、ワニと話せるおじいさんを呼んでワニと会話し、その人の身体の一部だけでも、返してもらうのだそうです。
ティモールでは(ロスパロスでは?)何か悪い事をした人がワニに噛まれる、もしくは食べられると言われています。
去年の11月、野菜を採りに行った際ワニに食べられて行方不明になった女性がおり、ワニと会話し、彼女の頭だけ返してもらったそうです。恐ろしく、信じられない話ですが、写真を見せてもらった今は、そんな話を信じ始めてしまっている自分がいます。

少し話がそれてしまいましたが、イラララル湖で釣れる魚は川魚。このお魚、臭みが無く、本当に美味しいです。

魚釣りに行く際、
「ゆい、海と湖を比較するような言葉は口にしちゃダメよ。例えば、この魚は海の魚みたい!とか、湖だけど海みたいな広さ!とか。とにかく海と湖、魚関係の言葉は絶対に言わない事!」と注意を受けました。なんでも、これも御呪いの1つで、口にした場合は、ワニに食べられてしまうんだとか…。

たくさんの人がすでに魚釣りを始めていましたが、とっても静かな雰囲気。みんな集中しているのか、ワニを怖がって静かにしているのかは怖くて聞く事が出来ませんでした。
ときどき、魚が逃げてしまったようで「あっ!バカ野郎!!お前なんてどっかいっちまえ!!」なんて叫ぶ、ちょっと野蛮な言葉も聞こえてきてビックリしました…笑。
本格的な釣竿を持っている人もいますが、竹で作った手作りの竹竿やペットボトルに釣り糸を巻いただけの人もおり、釣り方は様々です。私もチャレンジしましたが、まだまだ未熟で、最後の方は友達家族が釣った魚を子供たちと一緒にカロン(米袋)に入れる作業ばかりしていました…。
魚はたくさん釣る事が出来、森の中で調理をして食べました。

食べる際、ウクという名前の7歳の男の子が、「お前も一緒に食うのか?」と私に聞きました。お前って!とツッコミを入れようと思ったのですが、ただただ面白くて、私は笑ってしまいました。ウクと同年代の女の子、ガビが「お前じゃなくてパヤ(パヤは私のあだ名です)!一緒に食べるに決まってるでしょ!」と私の代わりに言ってくれました。ウクは、私に対して「本当に(肌が)白い…。卵みたい…」を繰り返し言っており、とても可愛く、面白かったです。

ティモール派遣が5年目に入った今、だんだんとティモール人化しているような、そうでないような…人種を越えて、立場を越えて、文化を越えて、融合するような、そんな不思議な感じがしています。
ティモール人になりたいのではないけれど、出来るだけ寄り添いたい、わかり合いたいという想いは、昔も今も変わっていません。日本人として曲げたくない思いもあるし、ティモール人と一緒にいて、変えられた考え方もあります。

お互いの想いを分け合えるよう、本当は聞きたくないような相手の一方的な想いも、聞くように努めています。自分はあなたの言葉でこう感じたけれど、あなたはどう?あなたがその言葉を私に伝えたのはどうして?…まずは、相手の言葉や思いを“聴く”事から始めています。「もういいよ!」と言われてしまう事もたまにありますが…。
そんなときは時間をおいて、でも、必ずそこで終わりにしないようにしています。

今月はとっても忙しかったのですが、ティモール人たちと共に、楽しいときを過ごす事が出来ました。

2015年2月27日 深堀夢衣

【 筆者紹介 : 深堀夢衣さん 】
深堀さんは、AFMETの現地事務所代表。
愛くるしく逞しく、どこまでも人々に優しい女性。
AMR(アマゾネスめひリアリダデ)は、そんな深堀さんの愛称!
みんなの夢を実現するため明るく力いつぱい頑張っています。