東ティモール通信 45

 日本の皆様、ボタルディ(こんにちは)!ロスパロスはほぼ毎日雨が降っています。 雨と雷で大木が倒れて道をふさいだり、電線が切れて電気がこなかったり…仕事にならないときもありますが、ろうそくを灯して静かな一夜を過ごすこともあります。
 雨の毎日なのですが、ロスパロス人(特に男性)は傘を差しません!びしょびしょで出勤するスタッフに理由を聞いてみると、「だって格好悪い!男が傘を差して歩いていたらおかまだと思われる…。」という、なんじゃそりゃ!な返事でした…。雨に濡れて風邪を引くよりも、カッコ良さを追求する男たちのようです。笑
さて、今回はAFMET副理事長と理事が東ティモールを訪問して下さった際のお話です。

*イリオマール訪問*

 2月2~5日、AFMET副理事長と理事が東ティモールを訪問して下さいました。現在プログラムを実施しているイリオマールへの訪問、スタッフを集めて今後の話し合いを行う等、とても有意義な時間を過ごすことができました。
 ロスパロスからイリオマールへは車でおよそ3時間かかります。車中ではAFMETの歴史が話題にのぼりました。私が派遣されたのは2010年のこと。これまでたくさんの方がAFMETの一員として東ティモールを訪れ、事業を実施していたことがわかりました。私がはじめてロスパロスに来たときは、電気が夕方6時から夜12時まで。ネットは電話回線でした。蚊のいる部屋で汗だくになりながらメールを書いていたことが懐かしいです。2010年以前にいらした方はもっと大変な環境であっただろうし、そのために日本人同士でケンカになり、理事の方が仲裁のためにロスパロスを訪問しなくてはならないこともあったようでした。そう考えると、ロスパロスで毎日を一緒に過ごした先輩方には、本当に感謝しなくてはいけません。日々の悩み、嬉しかったこと、イライラしたこと、感動したこと、泣けたこと…。それらをすべて共有し、何よりも、つらさやイライラを笑顔に変えてくれました。
  当時の私は23歳!社会経験もない23歳を受け入れるとなると、今の私ではとても不安になります。ぶっとんだ若僧にみられていたんだろうな…と思います。知らないことは罪だと最近思うのですが(単になにかの本で読んだだけの文章ですが)、知らないということで間違いを起こすことってたくさんあると感じます。当時の自分はどうだったんだろう?知らないことを平然と(そして堂々と)話し、主張して、先輩方を嫌な気持ちにさせたこともあっただろうな…と反省しました。また、知らなかったAFMETの歴史を知ることができた3時間でした。AFMET設立に貢献して下さった皆様、AFMETに関わり、これまでにプロジェクトを実施して下さった皆様に、改めて感謝するときでした。
 イリオマール到着後は、CHC(コミュニティヘルスセンター)を訪問しました。副CHC長のナルシジュ氏、一緒にプログラムを実施しているCHCスタッフのアンセルモ氏(栄養・マラリア・ヘルスプロモーションの3つのプログラムを兼任されています)と面談し、プログラムの進捗状況と現在イリオマールが抱えている問題について話し合いました。
t45-1
↑CHCでの話し合いの様子。 
t45-2
↑CHCの前で。(左から)漆原さん、アフメット現地代表、副CHC長、CHCスタッフ、山口さん、AFMETスタッフ

 2015年に一番多く発症した病気はISPA(呼吸器罹患)。下痢、蟯虫、皮膚病と続きます。これらは衛生環境の悪さが原因で罹る病気です。CHCのスタッフたちはイリオマールの衛生環境について、口をそろえて「a’at liu(かなり悪い)」と言います。それもそのはず、イリオマール準郡の中でトイレがある世帯はたったの20%だけです。実は私もスタッフたちも、イリオマールに行く際の排泄は青空トイレでおこなっていました。さすがにこれでは病気になってしまう…と思い、トイレのあるお宅と交渉し、現在はトイレのあるお宅で滞在させてもらっています。
衛生環境が悪い原因(トイレを設置できない原因でもあります)の一つに、水不足が挙げられます。CHC付近には水タンクが設置されていますが、1日に蛇口を開けて良いのはなんと1時間のみ。乾期などで水の量が少ない場合は、2日に1度の使用となることもあるそうです。1時間では世帯全部に必要な水量をカバーすることは出来ません…。水を入れる容器は“ジェリゲン”と言われるもので、通常はこの中に油が入っていて、お店やキオスクで販売されています。油を全部使い終わったあと、洗剤で洗い、水を入れておく容器とするのです。飲み水、料理、手洗い、水浴び…。水は生活に絶対必要なものです。CHCはイリオマール準郡の中で都会的な方である、イリオマールI村とII村の中ほどにあります。もっと奥地に目を向けると水を貯めておくタンクもなく、川などに水を汲みにいかなければなりません。多くの世帯が200m以上先の水源に水を汲みに行っています。家族の中で水を汲みに行くのは女性や子どもたちです。1つのジェリゲンに約5Lの水が入るため、およそ5kgある容器を頭に二つ、両手に一つずつ抱えて悪路の道のりを歩くのです(赤ん坊がいる場合は赤ん坊も背中におんぶした状態です)。

t45-3
↑水浴びをする女の子。
t45-4
↑ジェリゲンに水を汲むお母さん。

 また、水にアクセスしている世帯は、イリオマール全体で約40%。ただし、この水は安全であるとは言い切れません。乾期になると水源が枯れてしまうか、水量は大幅に激減してしまいます。どんなに泥が混ざっていても、どんなにこれは飲みたくないと思う水でも、その水を料理に使い、飲み水とするしかありません。
 イリオマールCHCのスタッフたちは、「環境衛生改善と水設備とトイレの設置を最重要課題として活動を実施していきたい。」と話してくれました。AFMETがどの程度介入できるかはわかりませんが、現状を知った者として、なにが私たちにできるのかを考え、人々と話し合い、イリオマールでの活動を継続していきたいと思います。

*日々の感謝*

 2015年12月で、東ティモールに派遣されてから丸5年が経ちました。早いなぁ…と毎年思うのですが、先日はデング熱にも罹り、若い頃とは違う身体になっている(確実に歳をとっている)と実感しております…。身体のことは別にして、JLMM/AFMETのスタッフとして、本当にたくさんのことを日々学ばせてもらっています。また、現地スタッフの声をAFMET理事の方々が親身になって聴いて下さっていることに感謝しています。現地のスタッフたちがどんなプログラムを実行したいのか、AFMETの将来をどんな風にしていきたいのか。現地の声を重視して下さっています。また、AFMETのスタッフとして日々奮闘してくれている3名のスタッフにも感謝です。開発が進んでいるためなのか、政府機関や他のインターナショナルNGOのスタッフ給与も、物価も、年々上がってきています。他機関と比べると給料が少なめなのですが、「それでもやりたい事ができる!」とAFMETに残り、頑張ってくれている彼らです。
2月4日、スタッフが全員集まり、副理事長と理事と共にAFMETの将来について話し合いを行いました。実は、ローカルNGO化を考えていたのですが、先に挙げた理由もあり、スタッフたちがAFMETから離れていってしまったためにスタッフ人数が不足し、ローカル化どころではなくなってしまったのです…。今後は、東ティモールでも政府登録を行い、現地AFMETは現地で、日本AFMETは日本でそれぞれファンドを探していくかたちになりそうです。今後、どんな事業を行っていきたいかも話し合われ、それぞれのスタッフからたくさんの意見を聞くことができました。それがどんな事業なのかは、決まり次第お伝えしたいと思います!

t45-5
↑会議終了後。新しい事業に関するたくさんのアイディアが出ました!
t45-6
↑事務所の看板前で。

2016年3月14日 深堀夢衣