「防衛ホーム」紙に北原会長が寄稿「東ティモールの防大留学生たち(1)」=未来を創る若き力=

2015年3月、東ティモールの防衛大学校留学1期生3名が初めて卒業したのに続き本年3月には2名の2期生が卒業しました。
現在、防衛大学校在学中の東ティモール留学生は9名。

以下寄稿文より

東ティモールの防大留学生たち(1)
日本東ティモール協会会長 北原巌男
未来を創る若き力

 平成28年4月6日、小原台の満開の桜が祝福する中、防衛大学校の入校式が行われました。会場には真新しい防大生姿が微動だにせず静まりかえっています。
 日本人学生と共に、今年はアジア9カ国の留学生が緊張した面持ちで着席しています。モンゴル、韓国、フィリピン、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマーそして東ティモールの24名です。大変な不安の真っ只中にあることと思います。
 でも5年後卒業するときには、防大に来て良かった、日本に来て良かった、かけがえのない同期に恵まれて良かった、と流ちょうな日本語で、心底から大きな声で言えるようになります。2010年4月に東ティモールから初めて防大に入校し昨年3月に卒業した第1期生、本年3月卒業した第2期生のいずれもが、このような気持ちで本国へ帰って行きました。そして今、アジアで一番新しい国軍づくり、国づくりに若き逸材として頑張っています。それぞれがとても頼りにされ活躍しています。
  “防大教育&防大スピリッツIN東ティモール” です。
 こんなに嬉しいことはありません。
・「私たち東ティモールの学生は、学力ではかないません。しかし、規律の厳守は、東ティモールの名誉にかけて、先輩から後輩へ確実に引き継いでいます」
・「後に続く後輩のためには、私たち先輩が今、全力で頑張ることです。私たちは、後輩が乗り越えて進むべき私たちのレベルをできる限り高く設定しておかなければなりません。私たち先輩の責任です。そうでなければ進歩はありません。そんな気持ちで頑張りました」
・「自分たちの経験を踏まえ、私たちよりもっと優秀な、やる気のある若い人材を防大に派遣するよう努めます」
 卒業した1期生、2期生は、いずれも僕たちが東ティモールにいたときに送り出した留学生たちです。これから先5年間、本当に大丈夫だろうかと心配でなりませんでした。本屋さんのない東ティモールでしたので、妻はインドネシアのバリ島まで出かけ、数学や化学の参考書(インドネシア語と英語の2カ国語で書かれていました)を一人一人に山ほど購入して来ました。「必ず日本へ持って行くこと」と言って渡していましたが、その量と重さに「スニーカーを2足持っていくので…」と渋る学生もいました。妻は優しく「スニーカーを持って行く必要は全くありません。参考書は絶対に役に立つから持って行きなさい」
 そんなことがあった留学生達が防大留学の中で、教職員の方々の教育・指導によって大きく成長し、卒業することが出来ました。達成感に満ちた彼らの笑顔から大きな自信と意欲を感じます。東ティモールの未来を創るかけがえのない若き力の誕生です。
 こうして僕は、東ティモールの留学生を通じて防大教育の不思議を体感しています。そして、「頑張れ!頼むぞ!」と、卒業生の背中を強く押し、胸を張って彼らを東ティモールに送り出している自分を幸せに思います。
 卒業生たちは、防大留学の中で学んだ事から国軍づくりに役立つ事をまとめ、あるときは共同で、また一人で、意見を求めて来ました。またあるときは自宅で近所迷惑も考えず防大学生歌をみんなで歌いました。歌詞にある「日の本」を「東ティモール」に言い換えて歌うこともしました。そして最後に「ビバ ティモール ビバ!」と叫び合いました。ちなみに、東ティモールのことを東ティモールの皆さんは「ティモール ロロサエ」とも言います。現地の言葉でロロは「太陽」、サエは「昇る」を意味します。つまり日本と東ティモールは、共に「日出づる国」同士なのです。

ご参考:防衛ホーム新聞社防衛ホーム誌より