命の水

住めば都

東ティモールでの2年間、電気のない村へ行ったり、水を遠くまで汲みに行ったりの生活を経験してきた。もちろん不便で、大変な生活だが、 まぁそんなものと受け入れられたし、たいていのものがいつでもすぐに手に入る日本とは違う、この生活のよいところも見つけることができた。

親心

そんな生活にも慣れてきた3年目、子どもを授かったことで、今までとは違った視点を持つようになった。ここでは生水は一度煮沸してから飲 むのが一般的で、ともかく味は別として、私もそれを飲んでおなかを下したことはないので、あまり気にしていなかった。それなのに、この水でわが子のミルク を作る現状に立たされ、大丈夫だろうかと不安になり、濾過された水を買って煮沸して使っている。濾過された水でなくたって、周りでは子どもたちが元気にす くすくと育っているけれど・・・。

私たちだけなら、2・3日洗濯しなくてもよかったものが、今では毎日洗っても洗っても洗濯ものはなくならない。うちは幸いにも地下水をく み上げて使用する水道があり、電気のあるときにはじゃんじゃん水がでている。もし家に水道がなく、どこか遠くに汲みに行かなくてはならない状況だった ら・・・と考えると、水道のない村でしっかり子育てをしている人たちには本当に頭が下がる。

東ティモールの水事情を説明すると・・・

蛇口をひねると水が出る状況にある家は少ない。そういう場合、たいていは(水圧が得られるよう)高所に設置した大きなタンクにポンプで水 をくみ上げて溜めてある。一世帯が丸一日充分に使えるぐらいは溜められるので、一度いっぱいにしてしまえば、停電しても水は使用可能だ。同じように電気を 使って水を得る場合、うちのように地下水をくみ上げたり、地区によって大きなタンクがあり、それを皆が共有していたりする。いずれも電気を使っているの で、停電と同時に水も使用不可能になる。

電気のない地方に行くと、地下水を手押しポンプでくみ上げる、湧水を使う、山水を引いてくる、ポリ容器を持って水源まで汲みに行くといっ た方法で水を得ている。地下水や湧水は乾季がくると量が減ったり、枯れてしまったりする。また雨季には濁ってしまうこともある。山水を引くにはパイプや ホースが必要でお金がかかり、予算がない場合は竹を半分に割り、節を削ったものを何本もつなげて水を流す。その一か所でも歪んでしまったら水の流れは止 まってしまうし、蓋がないのでゴミは入り放題で、濾過して使わなければならない。

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いずれにしても、水を得るということは本当に大変なことなのだと気付かされた。生まれてから今まで、水道をひねりさえすれば水が出てくる (しかも熱湯まで)環境に育った私は、その存在の大きさ、大切さを考えたこともなかった。衣・食・住、全てに関係している水がないということは、何にも増 して生活を辛いものにさせる。水がなければ服は洗うことができない。水がなければごはんを炊くことはできない。水がなければ掃除をすることができない。電 気がなくたって(もちろん電気もすごく大切な存在ではあるけれど)その代用はあるけれど、水の代わりはないのである。

しょっちゅう起こる停電に、そのため水が出ない状況の毎日に、できることなら一刻も早く、安心で安定した水を!と願うのです。大切な子どもたちのためにも。

2011年10月6日

【 筆者紹介 : なっちゃん 】
なっちゃんは、東ティモール人のご主人との間に可愛い女の赤ちゃんに恵まれ(2011年誕生)子育て奮闘中の日本人ママです。当協会の現地通信員でもあります。なっちゃんの見た今の東ティモールをお届します。ご期待下さい。