東ティモールの行商さんたち

戸外の風景

うちから見える道路は、決して大通りではなく、中心地からも離れていますが、観察していると実にさまざまな人が行き来していることに気づきます。

中でもおもしろいのが行商人。肩にかけた長い棒の両端にいろいろな商品をぶら下げて歩いています。野菜や干物、洋服はまぁ普通。とれたての 魚は、午前中は新鮮でおいしそうですが、真夏の暑さにやられて、午後にもなると一夜干しみたいに干上がってきているので要注意。どこかの食堂からもってこ られたおかずも、炎天下で腐ってはいないか?これは食べてみるまで分からないので買うのには勇気が必要。手足口を縛られ、おとなしく吊られている子豚や、 逆さになった鶏も、値段次第で買いたい人は結構います。 あるときには、ものすごく大きな鍋をたった一つぶら下げたおじさんが・・・。すれ違いざまに、「あら、ちょうどこんな大きな鍋が欲しかったのよ。」と思う 人が、いったい何人いるのでしょうか。思わず、頑張れ!と声援を送らずにはいられません。

道具箱

こんな風に、一目見てすぐに何を売っているのか分かる人たちもいれば、私のような素人ではうっかり見過ごしてしまうような、一見普通に歩い ているけれど、実は行商人、という人たちもいます。鞄と木の箱を提げたおじさんを見て、主人が、「彼はTuku Osan Meanだよ。」と言いました。直訳すると、“金をたたく”、つまり指輪やイアリングを作ってくれる人でした。木の箱は道具箱、この箱を提げて歩いている 人は、だいたいこのTuku Osan Meanか、靴の修理屋なのだそうです。

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仕事ぶり

すれ違いざまに、「あら、ちょうど作り直したい指輪があったのよ。」という人もあまりいないように思いますが、私たちはほんとうにちょう ど、もしTuku Osan Meanがいれば、結婚指輪を作ってもらおうと話していたのです。おじさんはインドネシア人。家族をおいて、単身東ティモールで行商をしています。クリス マスには故郷に帰るといっていました。道具箱ひとつを提げて町から町へ、金を叩くには、大掛かりな設備がいると思っていましたが、おじさんはこの小さな道 具箱を広げ、もくもくと作業を始めました。

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元の指輪を二つに切り分け、平べったかったその一つ一つを熱して、小さな丸い塊にし、それからは、その小さな金の玉を熱しては冷まし、叩い て少しずつのばしての繰り返し。金槌と叩き台、軽油ランプとストローみたいな火吹き棒、何だか分からないけれど薬液と水、みたところたったこれだけのもの で、金の指輪を作ることができることを知りました。これで手間賃は4ドル(400円弱)。婚約指輪は月給の3倍じゃなかったっけ?・・・高価な指輪はもら いそこねましたが、作り手の見える、世界でたった一つの指輪。こんなエピソードや気持ちが、何よりの宝物となりました。

2011年12月13日

【 筆者紹介 : なっちゃん 】
なっちゃんは、東ティモール人のご主人との間に可愛い女の赤ちゃんに恵まれ(2011年誕生)子育て奮闘中の日本人ママです。当協会の現地通信員でもあります。なっちゃんの見た今の東ティモールをお届します。ご期待下さい。