震災見舞い・・東ティモール

 国難と言われるほど、社会に大きな衝撃を与えた地震・津波、そして安全神話が完全に崩壊した福島原発事故から早くも9ヶ月が過ぎました。その間の情報については各メディアにより多くの情報が流れているが、大切なことはエネルギー資源の殆どない我が国にとって、今回の原発事故を契機に太陽発電等のクリーンエネルギーへの転換施策を強力に推進し、良い生活環境を次世代へ継承したい。

それはさておき、現在までにテレビを初めとする各マスコミにも報道されなかった、それは小さくて大きなニュースをここにお伝えしておきたい。それは2002年に独立した国で、長野県や岩手県ほどの面積しかなく人口は約106万人、国民一人の一日の平均生活費は0.88USドル(日本円で約71円)(2011年1月の同国の経済情勢・データによる)で、国民の90%がキリスト教で残りがイスラム教です。そして主な輸出産品は国民の約80%を占める零細農業によるコーヒーのみで、その他の産業が殆どない輸入に頼る慢性的な貿易赤字国です。

私達にはややなじみが薄いですが、この国こそ「東ティモール」なのです。この国は、インドネシアからの独立などの争いが長く続き、20万人を超える尊い命を失い、物心両面にわたって国民は多くの犠牲を負い、国はすっかり荒廃してしまった。それだけに、国民は当然ながら、平和の有難さ、愛国、建国への意識が高まり心を一つにして一生懸命に頑張っている。しかし現状では、地方の多くは電気やガス、水道もなく住宅もヤシの木の壁やトタン葺き屋根などの簡易なものである。そこには子だくさん(10人近い)家庭が多く、貧困による栄養失調や医療,衛生面で乳幼児の死亡率が高いと5日前にテレビのニュースは報じていた。

この東ティモールでは、3月11日の大地震直後

グスマン首相は緊急閣議を招集し、日本に対する惜しみない支援を決定。
国民議会(国会)では全会一致で犠牲者に哀悼の意を表明し黙祷をささげる。
ホルタ大統領、グスマン首相、ラサマ国民議会議長等から暖かいお見舞いの言葉を受け、国民の多くが現地の日本大使館で記帳された。
約100人の支援ティームを全額自国の負担で派遣する。
50万USドル(約4千万円)の義捐金を、3月25日にアルベス在京東ティモール大使が菊田外務政務次官に表明し手渡した。

菊田政務次官からは被災以来、東ティモールからの数々の暖かいご厚情、ご支援、お見舞い等に対して深い感謝を表明された。その後100人のボランティアは、ご厚情に感謝しつつ我が国として辞退したところ、義捐金を二倍の百万ドルとしての追加送金を受けた。この外国への義捐金は独立以来初めてで、然も最高金額との事です。貧困にあえぐ東ティモールにとってこの百万ドルは、それはそれは大金で経済大国の私たちの金銭感覚をはるかに超えた額である。

以上、震災見舞いの情報は当時、東ティモールの大使をされていた知人の北原巖男氏によるものです。

このたび、重責だった大使の任務をベストを尽くして終えられました。しかし、まだやり残した教育など問題は山積しており退任後休む間もなく「日本・東ティモール協会」を直ちに設立し、両国の「架け橋」として問題解決の一助になればと新たなスタートを切り、早速12月29日から1月3日まで第二の故郷である大好きな東ティモールへご夫妻で帰られるとのことです。

東日本大地震、津波と原発事故、それによる被災地であの大きな爪あとでさまよい人生そのものを奪われた暗黒の虚脱状態の中で日々の命を繋いでいる被災者と、国民の多くがその日の食事にも事欠くほどの貧しさにあえぎながらも、光明を求めて必死に生きている東ティモールの人たちの心情が、重ね合わされたものと推察し、人種や国境を越えた計り知れないご厚情にただただ、感謝感激あるのみです。声を大にして、東ティモールの大統領、首相初め政府の方々、国民の皆様大変ありがとうございました。
「落ちぶれて 袖に涙のかかるとき 人の心の奥ぞ しらるる」
この古歌がぴったりの心境です。

聖徳太子の「世間虚仮唯仏是真(せけんこけゆいぶつぜしん)」のお言葉、「この世はむなしく、実はないがその中で仏のみ真実である」と説いている。当時大陸からの進んだ文化により政治、経済、文化に大混乱が起きたが、何が起きたか分からない無常の世の中、これからのわが身に、何が起ころうとも、どのような人生が待っていようとも、今の私を支えて頂いている多くの方々に感謝しつつ最善の生き方をすべく努力したいものです。

この一年、日本中が災害により落ち込み、円高による産業の空洞化などで不景気にあえぎ、新卒者の就職難、国債もこれ以上は無理で、後は消費税率のアップだけがたよりだとか、やれTTPだ何だともめた最低の年でした。来年はどれだけ良くなるのか、多くは望めそうもないが少しでも良くなることを念じて止まない。

合掌

平成23年 師走

【 筆者紹介 : 平原さん 】
百戦錬磨の海の男。76歳の今も気力充実。荒波に向かって前進中。