東ティモールでの結婚・その2

結婚とフェスタ

こちらで結婚するにあたって、身内や友人、知人にお知らせをする際に添えた言葉は、「でも、フェスタはしないよ。」でした。フェスタとは何 かめでたいことがあった際に行われるパーティーのようなもので、結婚式の際のフェスタは、披露宴といったところでしょうか。家族や知人、友人を自宅に招 き、ごちそうを振る舞ったあとは朝まで踊る、というのがだいたいの流れですが、このフェスタ、ものすごくお金と準備がかかるのです。

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この写真、フェスタで用いられる鍋の一つ。これでご飯を炊くのですが、赤ちゃんが沐浴できるぐらい大きいです。

準備

何十人もが座れるだけの椅子が家にあるわけないので、椅子をレンタルし(椅子やテーブルのレンタル屋、も、ここでは立派な商いとなります)、お皿やスプーン、フォークも知人や隣近所から借りる(紙皿ではなく、ちゃんとした陶器のお皿なのです)・・・。

そしてメインは肉。肉がなければフェスタは始まらない!と言った感じです。その時々によって、牛やヤギ、豚を絞めます。

この準備にざっと一週間くらいかかり、費用は年収に匹敵することも。フェスタに向けて貯金しておいたり、親類が出し合ったりして何とか工面します。

フェスタ

さて、フェスタが始まると、人・人・人で、はて、この人誰だっけ?という人まで参加していたりするぐらい、たくさんの人が訪れます。そして、お腹を満たした後は、ダンス。男女ペアで曲ごとにパートナーを変えながら、朝まで踊り続けます。

おもてなし

結婚式イコール、その後はフェスタ!と張り切ってこられても、期待に応えられるだけのものを準備できないので・・・、このフェスタをやらな いよ、と事前に告知しておいたのです。結婚式は人生の中でも、とても大切な日であることはもちろんですが、その一日のためにたくさんのお金を費やして、知 人の友達の、そのまた友達の・・・と、誰だかわからない人たちまで混じって、盛大にやるよりも、お世話になっている人たちと心の通った時間にしたいと思っ たからです。

とは言え、フェスタはしないよ、と告知した私たちも、ささやかながら、来ていただいた方たちにお昼を振る舞いました。ご飯の材料は肉や野 菜、お米といったものから、ケーキの材料、調味料など、結構いろいろなものが必要です。それもキロ単位での購入!お米もざっと30キロに、丸鶏1ダースな どなど・・・。鶏肉を一度に1ダースも買うなんて、生涯これ一回きりかもしれません。これがフェスタとなると・・・と考えると、その大変さがよく分かりま す。

フェスタについて、経済的な負担などネガティブな印象だけを取り上げてしまったように思いますが、悪いところばかりでは決してありません。 考えてみると、私の日本の実家には、同じ柄のお皿が何十枚とあります。昔は日本でも、事あるごとに自宅で手作りの料理を準備して、人をもてなしていたんだ なぁと思いました。こうして、家族や隣近所の人が一緒になって、女の人は台所へ集まって料理をし、男の人はトンカンとテントをたて、会場を準備。その中で 果てしない日常会話を楽しみ、交流をはぐくむという、大変ながらも素敵な習慣が、ここ東ティモールでは失われず、今もなお行われ続けています。

2012年2月20日