東ティモール通信 47通目

 日本の皆様、こんにちは! またレポート書きをサボってしまいました。すみません(*_*;
最近のロスパロスは、一日に一度は必ず雨が降ります。長く降るときもあればパタッと止む時もあります。
おかげで(?)お風呂場に大量のナメクジが発生します。一体どこから入って来るのか不思議でしょうがありません。なぜなんだ!?気にならないときは放って置くのですが、さすがに水浴びをするときは塩をかけさせてもらっています…。まいた塩を忘れてナメクジごと踏んでしまうこともあり、困った毎日です。乾期が恋しいのですが、これから雨期がやってきます。
今回は味の素の活動レポート他日々感じている事などを書いたレポートです!

*イリオマールのSISCaプログラムの現状*
 現在私たちが活動しているラウテン県イリオマール準郡は、独立を果たして10年以上が経つ東ティモールでも、まだまだインフラ整備がされていない土地です。イリオマールの中心地であるイリオマールI村、II村を越えると、道路が整備されていない、電気が無い、電波の通じない村があります。そんな村々では、保健省のSISCaプログラム(シスカ…2008年から政府保健省が開始したプログラムの一つ。SISCaを実施する場所=ポストSISCaを村単位で設置し、月に一度医療従事者たちがポストSISCaを訪問、妊産婦と母親、5歳未満の子どもを対象に医療サポートを実施)にアクセスできる住民も少ない事が現状です。医療従事者たちを乗せた車がポストSISCaに行くためには、整備された道路が必要だからです(正直、歩いてでも行って欲しいくらいなのですが…)。

 イリオマール準郡の現状として、ポストSISCaが設置されている場所は、“車が到達できる場所”です。そのため、コミュニティヘルスセンター(以下、CHC)のすぐ近くにポストSISCaがあるなんてこともあります。SISCaの場所を決めるのは村長と集落長にゆだねられているそうなので、もう少し住民側に立って設置場所を決めたら良かったのに…と思うのですが、道路が整備されていないとなると、しょうがないことなのかもしれません。また、イリオマール準郡の保健ボランティア(以下、PSF)たちはモチベーションが低く、入れ替わりも激しいです。PSFたちに理由を聞くと「毎月のインセンティブである5ドルが支払われないから」「歩くのがキツイ」「月に一度と言いつつ来ないときもある」との事。新しく参加したPSFに対して測定方法等のトレーニングを行うと共に、CHCと彼らとの関係性も修復していく必要がありそうです。

 5月に各村にいるPSFたちを集めてトレーニングを実施しました。トレーナーはラウテン県保健局のスタッフ3名にお願いしました。保健ボランティアさんたちの仕事は何があるかと言うと、上記したSISCaプログラムのお手伝い(子どもの身体測定、参加者リストの作成、紙芝居などを使った健康についてのプロモーション活動)、結核患者への薬の運搬など多岐にわたります。
今回は、入れ替わりの多いイリオマールのPSFたちのためにリフレッシュトレーニングを実施することにしました。どうせやる気ないんだろうなぁ…文句がいっぱいでたら、こう言い返してやろう…なんて、前日は眠れない夜を過ごしたのですが、意外や意外!みんなのやる気のすごいこと!!相変わらず期待を裏切られることが多いよ、東ティモール…(あ、1つの村のPSF5名はインセンティブがまだ払われていないという事が理由で来てくれなかったのですが…。)彼らのモチベーションはどうやら「自分たちの村のために!」から来ているようです。皆の前で発表するときだからうまいこと言っただけなのかもしれませんが(←疑い過ぎでしょうか…?笑)、そのうちインセンティブが無いから働きたくない、、と言いだされないように、彼らのモチベーションを維持させていくのも私たちの仕事の一つです。頑張らなくちゃ!

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↑発育曲線記入の仕方を学ぶ。

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↑測定方法を学んでいるところ。みんな真剣です!

 他県でも同じことがあると思いますが、SISCa用の車もしくは救急車は、だいたい準郡のCHC長の自家用車です。CHC長が首都ディリで会議があったりした場合(なるべくかぶらないよう調整しているそうですが、保健省からのお達しがあった場合は逆らえないのが現状です)は、そちらが優先されてしまうので、SISCa車両はディリ行きのために使用され、SISCaは実施されません。それに、ここは東ティモール。1ヶ月前に予定が組まれるなんてことはほぼ皆無。とーっても早くて3日前、普通で前日のインビテーション(招待状)配布が当たり前です。そのためキャンセルの通達が遅れ、住民がSISCaの場所で待ちぼうけなんてことも多々あります。

 SISCaはだれのためのプログラムなのか?!と保健省の人たちに言いたくなってしまいます。
どうしてCHC長に車が必要なのでしょう?首都で行われる会議に参加してもらうためには車の配給が必要なのかもしれません。それはわかりますが、そんなシステムばかりでは、“何か”が無いと動かない人たちが完成してしまいます(既にかもしれない…?)。なんのための独立だったの?と思ってしまうこともあります。やればできるのにやらない、なにかもらえればやる。これが支援慣れというものでしょうか?あげっぱなしはよくありません。

 本当に困っている住民は助けたいと思うけれど、東ティモール政府で働く人を、私はどうしても支援したくなくなってしまいます。偉いポジションになる前は、「住民のために…」「こんな政策を考えています」なんていって、ポジションにすっぽり収まれば、自分のことばかり。車、家、携帯、美人な秘書…etc。どうして人間は一定のポジションを得ると周りが見えなくなってしまうのでしょう?自分の欲を捨てられないのは人間の性なのかもしれませんね…。NGOに出来る事は、住民に寄り添うことだと思います。本当は政府の人が一番そうであって欲しいけれど、お金がちらつく今、そんなことも言っていられないのかも…。私たちは住民のために住民がより近く、利用しやすいプログラムを実施していきたいです。

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↑翌日のSISCaのため実施した夜間イベント。

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↑SISCaにはたくさんの住民が参加してくれました!

 なんだか話が大分それてしまいましたが…。今年は3村が事業の対象となっています。アイレベレ村、カエンリウ村、フアト村。私たちにとっては新しい村です。6月からは5歳未満の子どもを対象とした身体測定(体重・身長・二の腕)、お母さんたちを対象としたセミナーを実施しています。セミナーは全部で3種類!母子の健康や栄養に関することを指導する「栄養セミナー」、栄養のある料理の作り方を指導する「調理セミナー」。栄養のある食材とその育て方を指導する「家庭菜園セミナー」の3つです。これらのセミナーは、スタッフのみではなく様々な機関にも声をかけています。私自身に栄養に関する専門性があるわけではないので、いろんな方からの支援が必要です。もちろんCHCのスタッフたちも巻き込んで一緒に活動を行います。これらのセミナーはSISCaも利用して、各集落で行います。SISCaが行われていないどんなに険しい道も、住民たちが歩いていける距離まで私たちが近づいていこうと思います。NGOでもできるんだから政府だって行けるでしょ!?と模範を示そうと思います。どんなに雨でドロドロになっても。ただ、、車が壊れないようにだけ、気をつけようと思います。

*知るということ*
 大学生のとき、校外学習で沖縄を訪問しました。同じ日本であるにも関わらず自分の知らない事がたくさんありすぎて、自分にガッカリしたと同時に、今知ることができて本当に良かったと感じました。でも、知ることができたのは、自分に興味があったからで、また、教えてくれる方々がいたからです。教えてくれる方々がいなければ、何も知ることは出来なかったように思います。同時に、興味があるってすごい事なんだなぁと思います。東ティモールの現状について最近知りたがらなくなってきてしまった自分がいます(政治関係とか特に、、見えたくないことが見えたりするから)。でも知らないと何も変えられないのかもしれないとも思います。

 何もしないで一日ボーっと過ごしていたいなぁ!なんて思う事もあるのですが、もう一人の自分がもっと周りを見たいともいってきて、なかなかボーっとさせてくれません。というか、周りにいるティモール人がなかなか一人にしてくれません。お休みの日くらい一人で過ごしたい!と思うのですが、車あるんだから魚釣り行こうぜ~とか(車目当てかよ!)、うちの子と一緒に遊んでよ~とか(私子守かよ!)、一緒にヤシ酒飲もうよ~(たまにはビール飲みたい…)、映画上映会してよ~(通訳大変なんですけど!)などなど、ティモール人からの要望は絶えることがありません。え~ヤダ!面倒くさい!と一瞬は思うのですが、じゃあ来週の土曜日はこの子の家に遊びに行って、一緒に魚釣りして、夜は映画見て、政治の話をしながらヤシ酒飲むか!とスケジュールに記入している自分がいて、笑えてきます。あ、政治のこと話すならノートも持って行こうっと。なんて。知りたくないと言いつつ、やっぱり知りたい。東ティモールへの興味はなかなか(まだまだ?)止まらなそうです。

2016年7月14日 深堀夢衣