東ティモール通信 50通目

日本の皆様、こんにちは。先月はレポートをおやすみさせて頂きました。すみません。
東ティモール通信も50通目を迎えました。いつも読んで下さっている皆様に感謝です。事業の支援先である味の素の担当者さんが12月頃東ティモールを訪問して下さる事が決まり、日本への一時帰国が春に変更になりました。6年振りの桜と皆様との再会を心待ちにしております♪
9月はJICA青年海外協力隊(JOCV)の7名がイリオマールを訪問して下さり、協同企画した栄養プロモーションをイリオマールで実施して下さいました。集落の皆もイリオマール準郡CHCのスタッフも大喜びで準備&迎え入れてくれました☆今回は長めなので、少し文字を小さめにお送りします!読みにくくてごめんなさい!

*JOCVのイリオマール訪問*
JICA青年海外協力隊(以下、JOCV)の長壁さんからAFMETの活動訪問をさせてもらいたいとお話し頂いたのが今年の2月。それからこまめに連絡を取り合い、9月に実現することになりました。突然ですが、皆さんもご存知の通り私は何の専門性も持っていません。大学を出てすぐJLMM(日本カトリック信徒宣教者会)に入り、東ティモールに派遣されてからの経験のみです。今こうしてロスパロスにいる事に何の後悔もありませんが、未だにこれがちょっと自分のコンプレックスです。保健に関する活動を実施しているのに看護師でもないですし、栄養に関する事業を実施しているのに栄養士でもない。日本で保健に関する仕事に就いていたわけでもないというただのアラサー女…。なんだか自分で言っていて悲しくなってきましたが、専門性を持っていないので、共に働いているAFMETスタッフ、保健局やCHC(Community Health Center)で働くティモール人にいつも支えてもらっています。JOCVといえば専門性抜群の方々!そのため、活動訪問にあたり、実はかなり不安な気持ちでいっぱいでした。上記に書いたような自分のコンプレックスもそうですが、専門性を持っている方々がAFMETの活動を見学したら、いわゆる“ボロ”をたくさん指摘されるのでは…とこわかったのです。現在活動を実施しているイリオマールも2015年に初めてAFMETが入った土地。事業の進捗状況も胸を張って「うまくいっています!」というにはなかなか難しい状態でした。
JOCVの皆さんがイリオマールを訪問してくれる旨話した際、CHCスタッフのアンセルモさんは私の気持ちとは裏腹にとても喜びました。「えぇー!本当に来てくれるの?!来てくれるだけで嬉しいなぁ~!!」と。イリオマールは首都ディリからはもちろん、ロスパロスからも遠く、道はガタガタで1日にロスパロス-イリオマール間を往復するだけで頭が痛くなるほどです。イリオマールに観光名所があるわけでもないため、外国人は全くと言っていいほど来ません。そんなイリオマールに来て一緒にプロモーション活動をして下さるなんて、CHCスタッフにとって心強い事ですし、そして何より住民の皆にとってとても刺激的であるに違いありません。ボロがでようが何しようが、イリオマールの人たちのためにJOCVの皆さんに来てもらおうと心に決めました。ボロが出てしまったらもちろん恥ずかしいですが、このありがたい機会に学べると思う事にしよう!と思い直す事ができました。

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↑モバイルクリニックに行くために石をどかしている所

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↑イリオマールに行くまでの道のり。

実施した場所はイリオマールの中でもドがつくほどの田舎、まだ電気も通っていない集落、リヒナ。CHCからも遠く、なかなか健康に関する情報が住民に届かないこともあり、AFMETはここでもモバイルクリニック(看護師/助産師による診察・処方箋・予防接種、住民保健ボランティアによる5歳未満の子どもの身体測定、栄養・調理に関するプロモーション)を実施しています。集落長さんが協力的でいつも多くの住民が参加してくれています。
訪問して下さった頼れるJOCVメンバーはコミュニティ開発専門の長壁さんと西田さん、看護師のあきさんと渚さん、栄養士の理恵子さん、理学療法士の愛さん、料理人の栄元さんの7人です!栄養満点な離乳食の調理と与え方の指導、そして、お母さん方に向けた母乳を出しやすくする体操を行ってもらう事になりました。離乳食に使用したのは現在日本でも注目され始めているモリンガ(和名:ワサビノキ。別名ミラクルツリーとも言われています)!モリンガはさまざまな栄養素が豊富に含まれている事で有名です。含まれている栄養素は90種類もあると言われており、タンパク質は鶏卵の1.5倍もあるんです!たんぱく源が不足しがちなイリオマールでモリンガは比較的簡単に手に入る事から、モリンガを使った離乳食作りをお母さんたちに推進するようにしています。モリンガにじゃがいも、ニンジン、豆とお米を使った離乳食と野菜のスープを作ってくれました。5歳未満の子どもすべてが対象なので、離乳食にはあまり調味料を加えずに野菜本来の味で食べること(ティモールでは塩や調味料をがぱがぱと入れてしまいがちなのです)、離乳食の固さや大きさを月年齢ごとに調整する事、そしてAFMETの無理なお願いにも関わらず、家族一緒に食べて食事をする事の楽しさをイリオマールの現地語であるマカレロ語でビデオ撮影して下さり、指導してもらいました。一番盛り上がったのは何といっても母乳体操!お母さんだけではなくお父さんや子どもたちも参加してくれ、参加者人数は約80名にまで上り、リヒナの皆にとって日本人の訪問がどれほど嬉しかったのかが伺えました。

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↑母乳体操に参加する住民たち

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↑離乳食についてのプロモーション

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↑いつ離乳食を与え始めるのかの指導

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↑月年齢ごとに柔らかさを変えた離乳食

今回の訪問に向けてたくさんの時間を費やして準備をして下さったJOCVの皆さん、JOCVさんのテトゥン語を現地語(マカレロ語)に訳してくれたCHCスタッフのアンセルモさん、普段のモバイルクリニックの仕事に加え、調理を手伝ってくれたPSFの皆、JOCVの皆さんが来ることを喜びプログラムに参加してくれたリヒナの皆に本当に感謝です。モバイルクリニックを続けていても子どもたちの栄養状態はまだまだ良くならず、今後もお母さんたちへのたくさんの知識・情報の指導が必要になってきます。欠かさず根気よくフォローアップを行っていこうと思います。
ここからAFMETの活動視察に参加して下さったJOCVメンバーからもらったコメントを掲載させていただきます。普段あまりロスパロスに縁のない皆さんがどのように感じ・考えたのか教えて頂きました!一部抜粋した文章で掲載させて頂いています。

・長壁さんより・
AFMETさんの活動に同行させて頂き特に印象的だったのが、AFMETさんとCHCスタッフとの関係でした。この国では多くの国際機関やNGOが保健医療分野に介入しており、彼らのターゲットの多くがSISCaやMobile clinic等の巡回診療を利用していることから、私が活動する首都ディリでもNGO等が巡回診療場所を活用するケースが多くみられます。しかしながら、その多くは自身のプロモーションや活動を巡回診療に来るコミュニティに対して行うことを主眼に置き、そこで診療を行っているCHCスタッフと協働するという観点はあまりないように感じます。よって、NGOとCHCスタッフが同じ時間・同じ場所にいるが、その活動は互いに干渉することなく完全に独立して行われているというケースをしばしば見聞きします。自身の目的の元に活動を行うことは当然なのですが、双方最終的な目的はコミュニティヘルスの維持・向上・疾患予防という点で共通しているはずです。同じ目的を持ちながら別々に活動を続ける援助機関と現地スタッフに普段からもどかしさを感じておりましたが、AFMETさんはCHCスタッフとの協働という点を軸に置き互いの持つ力を発揮しながら一つのものを作り上げようとしている印象を受け、そこにとても好感が持てました。CHCスタッフと歩みを合わせることで多くの場合は単独で行うよりもペースダウンすると思いますが、将来的に現地が自立していくベきという考えのもと辛抱強く現地のCHCスタッフたちと共に理解を深めながら進んでこられたAFMETさんにこの国の保健医療従事者とNGOの関わり方の一つの理想を見たような気がしました。また、コミュニティとCHCスタッフの間にもAFMETスタッフがかかわっていくことでCHCスタッフがコミュニティに対して横柄な態度で接するようなことがなく双方ともに良好な関係を築きながら活動ができているのではないかと感じました。AFMETさんがコミュニティの地区長さんと良好な関係を築いて頂いているおかげで、同行させて頂いた際に地区長さん特性のトゥアサブを振る舞って頂きました。お酒の弱い私ですが、あの時に飲んだトゥアサブの味は今でも忘れられません。

・渚さんより・
AFMETさんとの協働プロジェクトでは、私は主に離乳食のプレゼンテーション資料や原稿作成に従事しました。通常私は、主都ディリにて現地医療者対象の研修・教育カリキュラム作成に携わっています。そのため本プロジェクトでは、首都と地方で言語が異なる点に加え、コミュニティ視点での教材作成に留意する必要性がありました。教材作成中は、「どのようにしたらコミュニティの方々が離乳食の知識を得られるのだろう」「どのような言い方や方法、どの写真や図を使ったら離乳食の正しい知識を伝えられるのだろう」と考慮すべき点が多々ありました。しかし教材作成時は、コミュニティの方々の事を考えれば考えるほど、時間を忘れるくらい、教材作成に没頭でき、非常に楽しい時間となりました。
他のJOCVにとっても、「どのようにしたらコミュニティの方々の興味・関心を引き続けられるのか」「現地のニーズに即した離乳食は、どうすれば作れるのだろうか」等、各々が考える良い機会になりました。
今回の協働プロジェクトはAFMET・JOCVの双方にとって非常に良い経験となりました。一方で、課題も見つかりました。我々は当初、離乳食の栄養指導後に、参加者からアンケートを行う予定でした。しかし、時間的制約や現地人からの意見聴取方法に困難を極めたため、アンケート実施を敢無く断念せざるを得ませんでした。コミュニティの方々の理解度や意見を正しく把握するのは、コミュニティ対象の栄養指導を行う上で必須だと考えています。もし今後、今回のような協働企画がありましたら、ぜひコミュニティからの意見や理解度を把握できるような企画を立案したいと思いました。そして得られた知識や視点を、異なるコミュニティでも活用したいと思います。

・愛さんより・
驚いたこと:村の人の歓迎ムードと人懐っこい子供達。仕事で何度か地方に行ったのですが、地方に行くほど、恥ずかしがり屋が多く、特に私たち外国人は警戒される印象でした。しかしイリオマールの子供達は積極的に話しかけてくれました。そして村長さん始め現地スタッフさん達も、とても協力的でした。お陰でこちらもスムーズに活動を行うことができました。きっと、村の人とアフメットさん達との関係がしっかり構築されてるんだなと思います。
楽しかったこと:母乳体操。大人から子供まで皆恥ずかしがらずに、きちんとやってくれました。体操を教えている最中に、乳児のお母さんから、私が体操するから子供だっこしといてと預けられるほど、積極的に取り組んでくれるお母さんもいました。

・あきさんより・
今回、AFMETさんの活動場所に訪問させて頂き様々な気づきがありました。現在、私の任地アイレウ県のシスカでは、乳幼児健診時、体重測定•上腕測定のみで栄養失調児の診断をしています。AFMETさんが介入しているシスカでは、身長測定も導入しており、身長体重比の診断方法を用いることで、より細かく栄養失調児を診断でき、的確にサポートできるようになるかもしれないと思いました。見学させて頂いたシスカでは、医療スタッフ•村の保健ボランティアが協力し、それぞれの役割をしっかりと果たしていました。私自身もシスカプログラムをサポートする活動をしているため、保健ボランティアが体重•身長測定後、記録簿をつける。ただそれだけの事でも、それが出来るまでに何度も何度も指導する必要があり、習得するまでに長い年月がかかったんだろうな、今 スムーズに現地の方々だけで運営できるまでに、AFMETさんが親身にサポートしてきたからこそなのだろうなと感じました。今回は、離乳食についての健康教育もさせて頂き、ローカル言語を使用しなければいけないことの大変さを痛感しました。医療系隊員、料理隊員など、それぞれの専門分野を生かして思考錯誤を重ね準備し、当日の健康教育に挑みました!私達の話しを小さな子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、聞いてくれ、とても嬉しかったです。正しい知識を身につけ、子ども達の栄養改善に少しでも繋がってくれればいいなと思います。
・理恵子さんより・
AFMETさんの活動地イリオマールの村でいただいたヤシ酒が、ウイスキーのような香りでとても美味しくて、正直びっくりしました。伝統的な作り方が受け継いで大事に作られているのだろうと思いました。ヤシ酒のように、食材の調理の仕方や食べ方など伝統が受け継がれているのではないかと想像しました。けれど、天候の変化や、他国からの食材の流入など様々な影響を素直に受け、食材が不足したり、偏ったりで幼児の栄養不良につながってしまっているのではないかと思いました。
村の人々が環境の変化に対応する策を見つけ、ディリの生活より豊かであるはずの自給自走生活を継続しつつ、栄養状態の改善が図られることを祈ります。

・西田さんより・
私は普段ディリ県保健局という、東ティモールの首都の県レベルの保険セクターで主に学校保健や集団投与のオペレーションに関する活動しています。医療系の職種でも栄養士でも調理師でもない、およそ「デモ・クッキング」から遠い活動をしている私が今回の試みに参加した理由は普段行くことのない、首都から見れば所謂「僻地」であるイリオマールに住む人々や環境、医療へのアクセス環境、そして、そこでのAFMETさんの活動に興味を持ったからです。
ロスパロスを出て悪路を走ること2時間。イリオマールに到着しました。そしてイリオマールの人々は、アクシデントに見舞われたため2時間遅れで到着した我々外国人7名をとても温かく迎えてくれました。「普段どこに住んでるの?」「ディリにはいつ帰るの?」「もっとロスパロスにいなよ!」そんな温かい歓迎を受け、あっという間のデモ・クッキングは終わりました。
現在私は保健省で活動する隊員と共に、フィラリア症予防薬の集団投与のオペレーションに関する活動をしています。今回の活動を通した出会いから、イリオマールの様な田舎に住んでいる人にも薬が届くようなオペレーションを考えないといけないのだ、と強く思うようになりました。

・栄元さんより・
イリオマールの村の人達もすごく歓迎してくれて私達が行う活動を好意的にとらえて頂き、とてもみんなやりやすかったと思います。ロスパロスの現金収入が首都に比べてだいぶ下がるので、材料費にお金をかけられなかったのがやっぱり地方と首都では違うなぁと感じましたね。現実には即さないですが、料理隊員としては乳幼児の栄養指導で美味しく、なおかつ塩分控えめな方法・・・トリの骨とか動物の骨とか、野菜の皮とかでだしを取る方法を伝えたりしたかったなぁと思ってしまいました。

今回のレポートはちょっと長くなってしまいましたが、皆さんから頂いたコメントがとても嬉しかったのでほぼ全文の掲載をさせて頂きました。
AFMETにできる事は、住民一人ひとりの身近な存在になり人の意識を変えていくこと、小さな輪を大きくして繋がりを増やす事だと思います。私自身が出来る事はまだ少ないけれど、少しずつ少しずつ増やしていこうと思います。ときには(いつも?)助けてもらいながらでも。そんな風に思ったJOCVさんとのコラボ企画でした。今回繋がりができたので、いつかまたコラボレーション企画をできたらいいなぁと思います。JOCVの皆さん、本当にありがとうございました!今後も他機関との協力関係を強化していきたいと思います。

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左から渚さん、長壁さん、あきさん、理恵子さん、私、西田さん、愛さん、栄元さん

2016年11月20日 深堀夢衣