東ティモール通信 54通目

 日本の皆様、こんにちは。東ティモールはもうすぐ選挙が行われます。5年に1度の大切な選挙。どの政党が政権を握り、どんな政策を行っていくのか…みんな興味津々です。連日各政党が地方を周り、キャンペーンを行います。村全体が大盛り上がり!村の人たちも長距離を歩いて中心地まで行き、政党キャンペーンに参加します。よって、私たちNGOの活動はうまくいかないのです。政治に興味があるのは大いに良いことなので、選挙日(7月22日)が過ぎるのをただ待つばかりです。今のうちにじっくりと活動準備を行いたいと思います。

*味の素事業の活動*
前述したように今月もたっぷり時間があるので 、栄養プログラム担当者の方々と今後の事業の進め方について会議を重ねています。いつも相談に乗ってくれるのは栄養プログラム責任者のバージニアさん。彼女は他県出身者で、昔は日本のNGO SHAREさんのスタッフでした。ロスパロス人の旦那さんと結婚したために、今はロスパロスの保健局に勤めています。保健ボランティア(PSF)たちのトレーナーとしても活躍してくれる彼女は、とっても責任感が強いです。味の素事業をどう進めていくか一緒に考えてくれたのもバージニアさんでした。


↑PSFたちへのトレーニング中         

↑一人ひとりがわかるまでしっかり指導してくれます

 彼女との会議では、事業の進め方を中心に話し合います。2015年4月から開始した味の素事業も、来年3月に終了を迎えます。事業の目標は「イリオマール準郡にいる5歳未満の低身長児(Stunting)の割合を6%下げることとしています。そのために、これまでの2年間は子どもの成長(体重・身長・上腕)を記録し、母親へ栄養・調理の指導も実施してきました。また、併せて家庭菜園作りの指導も行い、食事に野菜を取り入れる試みも行ってきました。しかし、結果は芳しくありません…。

 問題の一つは、住民がプロモーションに対して飽きてきてしまっていること。通常紙芝居のような教材を用意して指導するのですが、読み始めると、「もうそんなの何回も聞いてわかってるよー!」という意見が寄せられます。新たに栄養ゲームという住民参加型の指導を始めたのですが、こちらは全員でできるものではないので傍観している人が多い印象を受けます。近くに行って見ることを進めるのですが、外国人が話しかけると余計に緊張するか、私はいいですと返されてしまいます…。
二つめは、栄養の指導をしても、なかなかその通りの食事作りを家庭で行えないというのが現状です。ご飯と野菜は採れるけれど、たんぱく質のある肉類、豆、卵…はお金が無いために買えない、もしくは売っている場所が家から遠いために、交通手段もなく、歩いて行くよりは今あるもので済まそうと考える様子です。鶏を飼っている家庭は多く、その鶏を食べる、もしくは卵を食べればいいじゃない!と思うのですが、さすがティモール人。鶏は闘鶏に使う!というのが常…。人の意識を変えるって本当に難しいです。
三つめは、毎月身体測定を行うのですが、毎月来る母親と子どもが少なく、指導を行ってもその後の様子がわからないということです。PSFたちに家庭訪問を呼び掛けているのですが、「エクストラで活動するんだからお金ください!」という状態…。


↑栄養ゲームの様子           

↑ティモール人の普段の食事。ご飯と空心菜の炒め物

 これらの問題点はすべて、前記したバージニアさん、また、イリオマール準郡でともに活動をしているCHC(Community Health Center)の栄養プログラム担当者とも共有しています。担当は、アンセルモさんという男の人で、本当はマラリア等他のプログラムの担当なのですが、CHCの人材が不足しているため、栄養プログラムも彼がやらざるをえない状態となっています。アンセルモさんに相談したところ、「毎月母親たちに来て欲しいなら…そうだなぁ、、例えば塩や味の素を配布するから毎月来て!と呼びかけるのはどう?!」との返答…。この方法を取り入れれば確かに毎月人が来るかもしれませんが、物で釣るようなことはしたくありません。
バージニアさんに報告したところ、「まったくもう!ティモール人は!!あ、私もティモール人だったわ!!!」と頭を抱えてしまいました。独立して15年。そろそろ自立に向けた取り組みをして欲しいところですが、なかなか進みません。物の支援、お金の支援。。依存されないような支援、物ではなくて、彼らが自立するような支援。。どうすれば良いのか悩みながら、毎日を過ごしています。
嬉しいことが一つあり、CHCに新しく栄養プログラム担当者さんの配属が決定しました!バージニアさんが保健省に何度も掛け合い、実現させてくれたそうでした。早く会いに行って関係性を深めたいです。

*Koko Sorte*
 Koko sorte-ココ ソルティとは、テトゥン語で運試しの意味です。日本でいう、「明日天気になぁれ」と言いながら靴を投げ、天気を占う的なものでしょうか…?ティモールでもそんなものがあるかなぁと思い、スタッフに聞いてみました。ティモール的運試しはよく、飼っている動物(ヤギ、ヒツジ)がいなくなってしまった場合に使われるそうです。飼っているヤギがまだ帰って来ず、それはヤギが道に迷っているだけなのか、人が盗んだのか知りたい場合にこの運試しを使うことが多いんだとか。


↑手順①のお祈りのところ。            

↑親指と中指を使って一方の手を測る         

 まずは両手を合わせ、息を吹きかけて祈ります。「私の飼っているヤギがいなくなってしまいました。もし人が盗んだのなら、手の指が重ならないことで示してください」と。このとき、手の指がぴったり重なることで示してくださいと祈ってもOK!そのあと、右手の親指と中指を使い、鎖骨の上から左腕の長さを測っていきます。もしも右手の中指が左手の中指と重なった場合は、人がヤギを盗んだのではなく、ヤギがただ道に迷ってしまっているということ。動物だけじゃなく、天気や事業がうまくいくか…なんにでも使えそうです。ぜひお試しあれ!

2017年7月13日 深堀夢衣