効率だけが全てじゃないのかもしれない

洗濯

東ティモールから日本での生活を通して、劇的に違うと感じたことは、家事に費やす時間です。今まで汗をかきかき一枚いちまい手洗い、時間が かかっていた洗濯物が、一気に放り込んでスイッチを押しさえすれば洗いから脱水まで洗濯機がやってくれるようになり、おまけに出来上がったら、ピーっと 鳴って教えてくれる。その間は別のことができて、あとは干すだけ。水道だって家の中にあるので、わざわざ外に行く手間がいらず、お湯まで出るので沸かす必 要もなし。

台所

日本の台所といえば立ち仕事、まな板に野菜を乗せて、ざくざくといっぺんに切るのが普通。軽快なとんとんという包丁の音が聞こえてくる、というのが、イメージとしてある人も多いのでは?

効率

考えてみると、東ティモールでは、まな板を使う習慣があまりありません。椅子や軒下に座りこんで、ナイフで鉛筆を削るみたいに、一枚いちまい野菜を切ってゆく。ゆえに、野菜を切るだけでも結構な時間がかかるのです。

薪に火を焚いて、水を汲んできて・・・と、ただでさえ時間のかかる家事。気が付けばあっという間に1,2時間が経っているので、もっと効率よくちゃちゃっと終わらせれば、自分の自由な時間を有意義に過ごせるのになぁと思ったものです。

意気投合

そんな時、同じようにティモールの女性たちの家事を見ていた、アメリカ人の友人がいました。ここの女性の家事は効率が悪い!と意気投合。ま な板を使って一気に野菜を切るだけでも、時間の短縮になるのにねぇ。二人、三人が寄ってたかって同じ作業をしなくても、切る人、洗う人、という風に分担し てやれば、効率がいいのにねぇ。何でゆっくりのんびりと、時間のかかるやり方をしているのだろう??私だったらさっさと終わらせて、好きな本を読むわ。同 感!

なぜだろう?

しかし、そうして二人で話しているうちに、もしかしたら、彼女たちはわざとこの時間のかかるやり方を選んでいるのかもしれない!という考え に至りました。ごはん支度だけでなく、子どもの世話、掃除、水汲みに薪ひろい、畑仕事、数え挙げればきりがないくらい、毎日の仕事は山のようにあります。 ごはん支度を早く終えれば、後は自分の自由時間!というわけにはいかず、これば終われば次、次が終わればまたその次の仕事と、やらなくてはいけないことは たくさんで、とても自分の時間なんてもてないのかもしれません。それならば、せめて野菜を切っている間、世間話に花を咲かせよう、座ってゆっくりやりなが ら、一息つこう、次の仕事が回ってこないように・・・。なんて思いながらやっているのかもしれない、そう思うようになりました。

大切な時間

いかに早くやるか、効率よくやるか、そんなことが重要視されるほうが多い世の中ですが、それだけがよしでもなく、全てでもなく、一見非効率的で時間の無駄だと思えることが、実は大切なひとときを作りだしていることもあるのかもしれません。

 

2012年6月25日