東ティモール通信 No.34

日本の皆様、こんにちは。2013年4月から実施してきたかまど普及プロジェクトが6月30日をもって終了し、どたばたとレポート作成に追われ、1ヵ月間レポートの提出をお休みさせて頂きました。すみません!

現在、ロスパロスは雨も上がり、カラッと良く乾いた涼しい気候です。水浴びがだんだん辛くなってきました…。

今回は、プロジェクト終了についてと、スタッフと話している最中に教えてもらった、彼らが昔から信じているアニミズムについて書かせて頂きました。ここに3年半住んでいても、まだまだ知らないことばかりだと、日々気づかされます。

*かまど普及プロジェクトの終了*

先月の6月30日をもって、かまど普及プロジェクトは終わりを迎えました。アジェさんの死、事務所の火災、かまどが乾かない…などたくさんの問 題が起きましたが、いろんな方からの協力を得、当初の目標であった“400世帯へ400基のかまどを普及する”は、達成することが出来ました。

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↑AFMETが作成したかまど。400基配布完了!

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↑4つの村に配布したかまど使用促進の看板

アサライヌ村の女性グループの収入向上支援を念頭に置きながら実施していましたが、かまどが乾かず、時間が間に合わないとわかった時、スタッフ たちと話し合いをし、まずは一番の目標を達成することが大切だと全員が再認識し、女性グループの支援は今後、個人の資金もしくは団体の資金を利用して、継 続して行っていくことを決めました。

ラウテン県内の何ヶ所かから、土を使用してかまどを作成してみましたが、建設した大きなかまどで焼くと全て真っ黒に焦げてしまう結果に、アサライヌ村のおばちゃまたちもショックを隠せない様子でした。
こ のまま上手く焼けない結果を彼女たちに見せていたら、彼女たち自身の自主性が無くなってしまうのではないかと私たちは思案するようになりました。彼女たち の自主性を削ぐ結果になるのであれば、AHISAUNの協力を得ながら、自分たちで何回か試験をし、ラウテン県の土を使用して良い結果が出た後(良いかま どが完成した後)で、女性グループの立ち上げは再度、行うことが可能です。
実際、AHISAUNにある大きなかまどで焼いてもらった、ラウテン県の土で作ったかまどは良く焼けているので、プロジェクト終了の機会を見て、アサライヌ村に建設した大きなかまどを再補修することを女性グループのおばちゃま方にも伝え、了承してもらいました。

AHISAUNからかまど(燃焼室)を購入した後は、交渉・運搬と、作成の過程に入りました。テクニカルスタッフの2人は、かがみながらの作業で腰を痛めながらも、毎日30基以上を目標として頑張ってくれました。

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↑AHISAUNから燃焼室を運搬。

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↑AHISAUNから購入した燃焼室を使用してかまどを作成。

(支援先)のプロジェクト担当者を連れて受益者を訪問し、かまどを使用してどう感じだかなどのモニタリングに行きました。訪問した家庭では、昔 から使用している3点かまど(3カ所に石を置いて薪をくべるタイプ)を使用しなくなった家庭はまだありませんでしたが、AFMETが普及したかまども同時 に使用してくれており、煙が少なくて良いこと、薪を多く使用しなくて済むので助かっているなど、受益者本人たちからの言葉を聞くことが出来ました。
プ ロジェクトを実施していて良かったな、と思えるのは、まさにこの瞬間です。根強く残っている3点かまどを完全に無くす事は、まだ難しいかもしれませんが、 ゆっくりと時間をかけて、ティモール人のペースで、徐々にかまどだけを使用してくれるようになって欲しいな…と願っています。

今回のプロジェクトはティモール人が中心となって活動を実施してくれたので、彼ら自身の能力が、ぐんと向上したように感じます。現地代表も、ス タッフの管理の仕方・他機関との交渉の仕方を学んでくれ、今後、インターナショナルとローカルに別れて活動していく際に必要な能力を、養う事ができたと思 います。また、テクニカルスタッフの2人も、現地代表の補助として、多くの力を発揮してくれました。この3人のスタッフと一緒に働けて、本当に嬉しく感じ ています。
今後は、彼らに仕事(プロジェクト)を委託する側として、責任感を持って、自分に出来る事から実行していかなければなりません。まず は、次のプロジェクトのために、住民のニーズ調査を実施する予定です。ニーズありきのプロジェクトなので、今後も、ティモール人が本当に必要としている支 援をしていこうと考えています。

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↑かまどを普及する際に実施したプロモーションの様子。

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↑HIVOSプロジェクト担当者と共にモニタリングへ。

1つのNGOを継続していくって本当に大変な事だな…と思います。ですが、ティモール人と一緒にプロジェクトを考え、実施できるなんて、なんて 楽しいんだろう!と1つのプロジェクトが終了した今、強く感じます。高校生からの夢だった“NGO職員として働く”の第一歩をようやく踏み出したように思 います。これからも、ティモール人と一緒に、自分の能力も向上させていきたいです。日本のAFMET、ローカル主体のAFMETと協力しながら、ティモー ル人のニーズにあったプロジェクトを実施していこうと決意を新たにしています。

*ティモール人が信じているもの*

東ティモール、ラウテン県には、現在でもアニミズム信仰が根強く残っています。血族一つ一つには先祖がおり、先祖は動物です。その先祖の動物は 殺すことが出来ません。タカ・ワシ・フクロウ・蛇・カエル・蟻…様々です。また、雷を操る人、唾で怪我を治せる人、骨折した人を治せる人、人を病気にでき る人、雨を操れる人、霧を追い払える人、銃で撃たれても何も感じない人、ワニと話せる人、病気の原因がわかる人…いろんな人がここにはいます。人々との出 会いがとても楽しく、時々、彼らの技の取得の仕方について教えようとしてくれる人もいます。

今回は、雨を操るおじさんのお話しを紹介しようと思います。雨を操るおじちゃん、カデルさん。(超有名人 注:ロスパロスでは)は、私が住んでいるところから車で40分ほどのPunoというところに住んでいます。

どうやって雨を止めるのかというと…なんと水を飲まないというだけのこと!!雨を止めている間は、水の代わりにずっとお酒を飲み続けるそうです。

「時々どうしても我慢出来なくて水飲んじゃって…怒られちゃうんだ…」と照れながら話すこのおじちゃん。お茶目です(笑)。カデルさんは、雨期 に、プロジェクトを実施している団体から雨を止めて欲しいと頼まれ、雨を必死に止めていたところ(我慢してお酒を飲み続けていたところ)、その場所の住民 から「お前が雨を降らせないせいで、俺たちのトウモロコシが全部枯れてしまった!!」と文句を言われて殴られ、殺されかけたこともあるとか…さすがラウテ ン人。あっぱれ!としか言いようがありません(笑)。

結婚式シーズンには人がたくさん訪れて、カデルさんに雨を止めてくれるよう依頼に来るんだそうです。野菜を買いに行った際に偶然出会ったカデルさん。私も必要なときは、このおじちゃんにお願いしようと思います(笑)。

未だにラウテン県に根強く残っている信仰なので、他県では、全く信じない人や、白い目で見てくる人もいますが、私は、彼らの愛すべき特徴の1つだと思います。
この信仰が根強く残っている理由は、ずばり、“信じる者は救われる”から(!?)。ラウテン人が“単純”と言われる所以がここにあるような気がします。

ここに住んでいると、彼らの信仰を私も信じたくなってきてしまいます。いろんな人とのちょっとした出会いが、今日も私を「あ~ここに生きている!」と実感させてくれます。そんな、カデルおじちゃんとの出会いでした♪

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↑伝統儀式が行われる場所。ウマアダット。

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↑ティモール人みんなの先祖、ワニ。ディリに行く際に見かける事があります。

15/July/2014

【 筆者紹介 : 深堀夢衣さん 】
深堀さんは、AFMETの現地事務所代表。
愛くるしく逞しく、どこまでも人々に優しい女性。
AMR(アマゾネスめひリアリダデ)は、そんな深堀さんの愛称!
みんなの夢を実現するため明るく力いつぱい頑張っています。