東ティモール通信 No.39

日本の皆様、こんにちは!

ロスパロスは最近毎日雨が降ります。雨期は、草が青々と茂り、花が咲き、動物や虫たちも喜んでいるようです。ここ何年かで、苦手だった虫を凝視出来るようになってきました。日本にいない、というか見ないような、いろんな種類の虫がいて、興味深いです。「なにこの虫!珍しい!!」なんてティモール人に虫を見せながら言うと「ひぃ~!」と言われたりしています。いつか、珍しい虫を紹介するコーナーをレポートで書いてみたいです。…あんまり嬉しくないかな…。さて、今回は、2月に通訳のお手伝いをしたお話しです。

*日本の消防車が東ティモールにやってきた!*

真っ赤に映える車体!消防車!一般社団法人-日本東ティモール協会の支援により、滋賀県で活躍していた消防車3台が東ティモールの内務省治安担当局に寄贈されました。「え、消防署がティモールにあるの!?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、実は…あります。消防署があるのは首都ディリと、第2の都市と呼ばれているバウカウ県。私が住んでいるラウテン県にはまだありません。バウカウ県は、ラウテン県のお隣にある県です。消防車も寄贈されたために、あと4県にも消防署をつくる予定があるそうです。燃えていく事務所を泣きながら見ていた経験のある私ですので、いつか全県に消防署が出来たらいいなぁと思っています。
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↑ディリ港から出発する日本の消防車3台
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↑ディリ港で備品をチェックする消防隊員の方々

消防車が寄贈されても、操作とメンテナンスが出来なければすぐに壊れてしまい、支援の意味がなくなってしまいます。滋賀県湖南(こなん。湖南市)消防局の消防隊員2名の方が操作の仕方とメンテナンス方法についてのトレーニングをティモール人の消防隊員約20名に実施する事となり、私はその通訳をする事になったのでした。今回トレーニングに来て下さったお二人(湯谷一彰さん、八田健治さん)は、寄贈される消防車を日本で使用していた消防隊員の方々です。
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↑トレーニング中の様子。湯谷隊員(写真上)と八田隊員(写真下)。二人が話し出すと皆注目して聞いてくれました。

通訳をする場合事前に資料を頂いて訳しておきますが、消防隊員の方から受け取った資料は、専門の単語が多いためにわけがわからず、本当にこんな状態でティモール人の前で訳せるのだろうか…と不安で仕方がありませんでした。通訳のプロではないので、テトゥン語を話す事は出来ますが、全部の単語はまだ習得していません。自分の専門外(私の場合保健分野以外)の単語は未だに辞書を引かなければわからない単語ばかりです。通訳をするとき一番大切にしなければいけない事は、当たり前の事ですが、人の想いを相手に“伝える”事だと思います。ティモール人のためにも、ティモールに来て下さった日本人のためにも。私が間に入った事で、余計にこんがらがならいように注意しながら、日本人の伝えたい想いが、ティモール人の心に届くように努めています。
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↑放水訓練。水の勢いが強い時は一人がもう一人を支えます。
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↑縦列の放水訓練。センター長が指示を与えています。

不安な気持ちの中始まった通訳でしたが、毎日とても良い雰囲気でした。私よりもずっと専門用語を理解していたティモール人の消防隊員たち。さすがです。私の訳がピタっと止まってしまうと、「マナ(テトゥン語でお姉さんという意味)!それはこうこうこういう意味だよ。テトゥン語ではこう言うんだよ」と教えてくれました。通訳中に訳が止まると、聞く気を無くしてしまう人もいれば、溜息をつかれる事も多いです。彼らの助けに本当に救われました。

先日、ティモールのお友達家族と一緒に魚釣りに行って来ました。ロスパロスには大きな湖があります。湖の名前はイラララル Ira-lalaru-。この湖の近く、マラハラという所です。
イラはファタルク語で水、ララルは流れが静かという意味です。この湖は、雨期になると水嵩が増し、道路が通れなくなる事もしばしばです。
また、ワニがたくさんいる事でも有名です。毎年何人かはワニに食べられる、もしくは噛まれています。ティモールでは、ワニは先祖ですので、殺す事は決して出来ません。
人が行方不明になってしまった際は、ワニと話せるおじいさんを呼んでワニと会話し、その人の身体の一部だけでも、返してもらうのだそうです。
ティモールでは(ロスパロスでは?)何か悪い事をした人がワニに噛まれる、もしくは食べられると言われています。
去年の11月、野菜を採りに行った際ワニに食べられて行方不明になった女性がおり、ワニと会話し、彼女の頭だけ返してもらったそうです。恐ろしく、信じられない話ですが、写真を見せてもらった今は、そんな話を信じ始めてしまっている自分がいます。

1つの場所から給水をして縦列に駐車した2台の消防車の先から放水する訓練やポンプ洗浄などなど、彼らには新しく学ぶ事ばかり。彼らの脳みそがパンクしないだろうか?!と私は不安でしたが、彼らの方からどんどん質問していて、訳がおいつかない事も多々ありました。ティモール人の消防隊員は、日本の消防隊員のお二人と通じるものがあったようで、通訳を介さなくてもジェスチャーや英語の単語でわかり合っている場面も見受けられました。ティモール人の理解力を尊重しながら、伝えたい!と思う日本消防隊員の気持ち。その気持ちに応え、知りたい!という思いでメモを取りながら一生懸命ついてきてくれたティモール人消防隊員。私も双方の熱い想いに心が動かされました。当初は5日間のトレーニングの予定でしたが、双方同意の上で日曜日の午前中もトレーニングを実施する事に。毎日汗だくで、身体は疲れていたと思うのですが、みんなとても良い笑顔でした。

二人が東ティモールを発つ日は、空港までお見送りに来てくれた東ティモール消防隊員のみんな。肌の色、話す言葉は違っても、人を助けたくて消防隊員になった思いは同じ。日本と東ティモールの新しい絆が生まれ、それに関わる事が出来て良かったです。

消防車にあまり活躍して欲しくは無いですが、今回学べた事を忘れずに、火災に遭う東ティモール人を今後も救助してくれる事を願っています。
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↑集合写真♪

2015年3月19日 深堀夢衣

関連項目:活動報告

【 筆者紹介 : 深堀夢衣さん 】
深堀さんは、AFMETの現地事務所代表。
愛くるしく逞しく、どこまでも人々に優しい女性。
AMR(アマゾネスめひリアリダデ)は、そんな深堀さんの愛称!
みんなの夢を実現するため明るく力いつぱい頑張っています。