夫婦げんかから見えてくるもの

プライバシーと近所迷惑

私たちが今住んでいるうちは、大家さんのうちを仕切って、二部屋を借りています。年中暑いディリでは、風通しをよくするためか、日本のよう に密閉されていません。そのため防音効果などは全くなく、隣の音はまる聞こえ。今日は何を食べているのだろう、何のテレビを観ているのだろう、今日は友達 が来ているな、はっきり言ってプライバシーなどありません。

娘が産まれてからは、夜泣きで迷惑をかけないかな・・・と気がかりだったけれど、そこは子だくさんの東ティモール、大家さんのところにも1 歳の子どもがいて、同じように泣くのでお互いさま、全く気にされていません。お隣さんのところも最近赤ちゃんが産まれて、そこからも泣き声が。どこのコン サートホールかと思うぐらい、音楽は朝夕関係なく大音量で流れているし、ご近所迷惑の概念はここにきてすっかりなくなりつつあります。

賑やかなお隣さん

さて、今週、大家さんのところで夫婦喧嘩が勃発。お隣さんや友達が止めに入るまでの大騒ぎになりました。聞き耳を立てているわけではないけ れど、もちろんうちにもまる聞こえ。最初のうちは、おぉ、やってるなと思っていた程度でしたが、聞いているうちに、だんだんとこの国の現状を思いを巡らす ようになりました。 奥さんは言いました。「家にいたら何もしないで寝てばっかり!たったこれだけの給料で働いた気になってんの!!」

だんなさんの仕事事情

だんなさんはセキュリティの仕事をしていて、8時間ごとの交代制なので、朝出かけたり夜出かけたりといったサイクルです。こうして働いて、 月給はだいたい100ドルから200ドルくらいで、生活していくだけで精いっぱい。この状況は大家さんのところに限らず、多くの家庭でも同じです。奥さん の思いも十分過ぎるぐらいよくわかるけれど、だんなさんだって一生懸命働いているのです。

より条件のよい仕事を、と思っても、今の東ティモールに、いったいどれだけの雇用があるといえるのでしょう。国民の多くが農業に従事者であ るけれど、日本と同じように若者の多くが職を求めて、またよりよい教育を受けるため、首都に出てきており、農業で生計を立てられる状況ではありません。し かし、首都に出てきたからといって、大半が職を得られないでいます。原因は多々あると思いますが、塩や砂糖、ペットボトルの水でさえ輸入にたよっており、 産業と呼ばれるようなものがないのも一つの原因ではないかと思います。また、ざっと考えてみても、職と言えばセキュリティやドライバーなど、外国人がいて 成り立っている部分も大きくあります。

独立して間もない国、自分たちはまだやっと歩き出した赤ん坊のようなものだ、という言葉をよく耳にします。これからこの国が発展していき、自分たちが先頭に立って経済を成り立たせていけるようになること、そこから生活のゆとりが持てるようになればと願っています。

ハッピーエンド

この夫婦喧嘩は4日も続く長丁場でしたが、円満解決。最後は仲直りできてよかったね、と拍手で終わりました。喧嘩もたまにはあるけれど、元 気な子どもが3人、そして毎日のように訪れる友人たちで、日々わいわいにぎやかなこのおうち。こんな日々がこの先もずっと続いて、そしてその中で、生活に 少しゆとりが生まれてくると、この上ないなぁと思うのです。

2011年11月18日

【 筆者紹介 : なっちゃん 】
なっちゃんは、東ティモール人のご主人との間に可愛い女の赤ちゃんに恵まれ(2011年誕生)子育て奮闘中の日本人ママです。当協会の現地通信員でもあります。なっちゃんの見た今の東ティモールをお届します。ご期待下さい。