子豚が売られていった日

つかの間の喜び

洗濯干し場を大家さんと共有していた我が家。大家族の大家さんが干してしまえば、物干しはいっぱいいっぱい、私たちの洗濯はまた明 日・・・。けれど、娘が産まれてからは、そうのんきにもしていられなくなりました。毎日毎日洗濯の山!そうはいっても他に干す場所がなかったので、お隣さ んに頼んで、私たち専用のスペースを確保。これで干し場所を気にせず洗濯できる!と喜んだのもつかの間、何とお隣さんがその下で子豚を飼い始めたので す・・・。

家で豚や牛などの家畜を飼うことに全く慣れていない私、せっかくきれいに洗濯した服の下に豚がいるなんて!!この悲しみを必死で主人に訴え てみるけれど、かわいがっている豚を、他の場所につないでくれとお願いするのも何だか気が引ける・・・、かといって他に干す場所もないし・・・、あの豚は 毎日お隣さんがきれいに洗っているから大丈夫!と、掛け合ってくれる様子もなし。とりあえずロープをなるべく高いところに張って忍ぶことにしました。

子豚に罪はまったくないけれど、毎朝彼女を見るたびに憎らしくてたまらない私。泥をはねられた日には、お前食べるぞ!!と心の中で激怒。そ んな私の気持ちを知ってか知らずか、毎日きれいに洗ってやり、餌をたくさんあげて、彼女を愛しているお隣さん。どけてくれなんて言えるはずもありません。

私のストレスは溜まる一方・・・。所詮外国人の私の気持ちなんて、誰ひとり分かってくれやしないのよ!!と、遂には夫婦げんかにまで発展。私たちがけんかしたところで、豚が気をきかせてどいてくれるわけでもないのですが・・・。

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救世主現わる!

そんなある日、私に救世主が現わる!子豚を買いたいと、一人のおじいさんがやってきたのです。愛している豚、売りたくない!の一点張りのお 隣さん。それでもあきらめずに日々足しげく通ってくるおじいさん。「売れろー、売れてくれー」と祈る私。そんな三角関係がしばらく続きましたが、ついにお 隣さんが折れる日がきました。

「私は彼女のこと愛しているのよ。メスはこの一匹だけなのよ。あんた、もう2、3か月待てば、今の倍以上の値段で売れるのよ。今売っちゃっ たら損なのよ。」と訴えるお隣さんでしたが、粘り強いおじいさんに根負け。150ドルと、この豚に子どもが産まれた際には、そのうちの一匹をお返しすると いう条件で手を打つこととなりました。

悲痛の叫びをあげながら、おじいさんに引っ張られていく子豚に、少しほろっときたのは気のせいで、翌日からまた気分爽快に洗濯を干せるぞ!と喜んだのが本音です。

2011年11月28日

【 筆者紹介 : なっちゃん 】
なっちゃんは、東ティモール人のご主人との間に可愛い女の赤ちゃんに恵まれ(2011年誕生)子育て奮闘中の日本人ママです。当協会の現地通信員でもあります。なっちゃんの見た今の東ティモールをお届します。ご期待下さい。