差し歯がない!

虫歯予防は歯磨きから

東ティモールで生活するうえで、気を付けなければならないことのひとつに、「歯の健康」があげられると思います。腕がよくて設備が整ってい る歯医者がないし、海外保険でも歯の治療は対象外といったものが多く、治療のためだけに帰国、というわけにもなかなかいきません。それなので、ここに来て 以来、とにかくよく歯を磨くようになりました。糸ようじで歯間をきれいにし、普通の歯ブラシで気がすむまで磨いたあと、先のとがった小さな歯ブラシで磨き にくいところをさらにきれいにして終了、長いときは30分くらい磨きます。外に出て、夜空の星を見ながらの歯ブラシはなかなか心地よいものです。

過ぎたるは・・・

その甲斐あってか、今のところまだ虫歯で辛い思いはしていないのですが、去ること半年前、あの糸ようじが災いしてか、磨きすぎて動かしてし まったのか、差し歯が取れてしまったのです。その時は主人の実家のある田舎で暮らしていたので、その町に唯一ある病院へ行き、応急処置をしてもらいまし た。ものすごく限られた資材を使い、歯用のセメントでくっつけてもらいました。その時に医者からは、ここには治せる資材がないし、私も抜歯しかやったこと がないから、首都のディリへ行ったときには、有料だけど歯医者があるからそこへ行くように言われていました。

つけてもらった直後、なんだかすこーし隙間があるなぁとは感じましたが、まぁくっついたのでよしとして帰宅したのを覚えています。首都に 行ったときには、歯医者に必ず行こう!とその時には強く思っていたのに、娘が産まれてからなかなか行くことができず、隙間は感じるものの、くっついている のでつい後回しにしていました。

その隙間があることで、接合部分に余計な負担をかけていたらしく、ゴリっと不快な音がしてまたも差し歯が取れてしまったのです。それ以来、 入れ歯みたいな状態で、はめ直してもすぐに取れてしまうので、歯を磨くときには取り外してから磨こうと決めていたのに、今日に限ってついうっかりつけたま ま歯を磨いてしまったのが運のつき。いつものように玄関の扉にもたれかかって、夜空を見ながら歯を磨いていたら、ぽろっと差し歯がとれてしまった!室内と 外のちょうど境目にいたために、外に落ちてしまったのか、室内にあるのかも分からない・・・。

私の差し歯は奥でなく、前歯なのです。

しゃべっても笑っても、歯がないのは一目瞭然。もう気持ちは焦るばかり、何が何でも見つけ出さないと!主人を呼んで、冷蔵庫を動かし、ゴミ 箱を動かし、もしかしたらとゴミ箱の中もあさり、探してもさがしてもみつからない。 外かもしれないと、探してみるけれど、同じような白い石ころがたくさんあって全然見当たらない・・・。焦っている私はもう行ったりきたり。その反面、主人 は当事者じゃないのもあってか、小さいわりに重量があるし、丸くはないからそんな遠くに転がるはずはない、落ち着いてじっくり探せ、と落ち着いた様子で、 遂に見つけてくれたのです!歯は玄関の扉を出たところの、すぐ下に落ちていました。

東ティモールでの医療は、治療費も薬も基本的に無料です。

歯もしかり。しかし、日本のように差し歯をつけたり、歯を削って銀歯を入れたりするような治療はなく、虫歯になったらその痛みに耐えるか、 抜くか、その選択しかありません。歯に黒くぽっかりと穴が空き、激痛に耐えている様子を何度も目にしてきましたが、本当に辛そうです。そして、抜歯という 選択をして、口を開けると歯が2、3本ないという人もたくさんいます。歯磨きは、出かける前や人に会うときのエチケット、という受け入れかたなのか、家に いてあとは寝るだけという夜は、あまり磨いている様子が見られないのも、虫歯が多い原因かもしれません。主人も昔は夜歯磨きをしていませんでしたが、私が しきりに磨いているのにつられて磨くようになってからは、夜歯磨きをしないと気持ちが悪いと言うようになりました。そして、今まで誰もそんなこと教えてく れなかった!とも。そう言われて、幼稚園や小学校で、歯を磨きましょう、こういうふうに磨きましょうと、私は教えてもらっていたんだなぁということに気づ きました。何気なく聞いていたことも、実は大切な教育のひとつだったのです。こうして、誰かが何かを教えてくれることや、歯が痛ければ歯医者さんが治して くれることのありがたさを、身にしみて感じるのです。

2012年1月20日